具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
【お悩み】もし、年上のベテラン社員が自分の部下になったらどうでしょうか。自分より経験豊富な社員が部下になったとき、扱いに困ってしまうのは仕方のないことです。どのように接すれば良いのか、職場における人間関係のヒントを組織開発の専門家に聞きました。
【回答】「年上の部下」は管理職が一人で引き受けるのではなく、組織の関係性の中で受け入れる
年齢も経験年数も下の部下とは異なる「年上の部下」の扱いは、多くの人が戸惑う経験なのではないでしょうか。
日本の企業は、もともと年功序列で力関係が決まる文化が色濃く、「年齢を重ねた人は偉い」という規範ができています。
しかし、経済成長が止まり、組織内でも役職のポストが増えず、能力主義へと変わる中で「年上の部下問題」が顕在化しているようです。
過渡期であるだけに、スッキリした正解が見出しにくい一面があります。
この問題は、「異質な存在」が職場に来た時の、関係性の再構築という課題でもあります。
生え抜きの社員しかいない職場に中途採用者が入ってきたり、日本人しかいない職場に外国の方が入ってきたりした時も同様の戸惑いを感じるのではないでしょうか。
「フィードバックレス」の状態がベテランを孤立させる
この時大切にしなければいけないのは、業務における目標設定をきちんとすり合わせることです。
目標が達成できたのかどうかが客観的に見える状態にして、丁寧にフィードバックすることで「目に見えないルール」を共有することができます。
そうすることで、「異質な存在」がゆっくりと組織になじんでいくのです。
逆に、年上の部下の経験を尊重するあまり「とりあえず、やっておいてください!」と仕事を丸投げしてしまうのもよくあるパターンです。
フィードバックがない丸投げ状態が続くと、いつまでもチームになじめない状態が続いてしまいます。
めんどうだと思っても仕事の背景を説明し、目標設定をはっきりさせることは欠かせません。
メンバーのスキルマップを共有し、個々人のスキルを「見える化」するのも一つのやり方です。
スキルを「見える化」することで、何が原因でいまひとつ成果が出せないのかがわかりやすくなります。
職場全体で個々人のスキルを共有できていると、業務に精通している中堅メンバーからサポートを得られたりします。
このような状態を作るのが、組織開発的にはいちばん理想的なアプローチかもしれません。
カジュアルな言い方をすると、「年上の方が来るけれど、こちらはあまり忖度しないでやろう」みたいな関わり方の合意をしておくのもオススメです。
基本的なことですが、これまでの経験をリスペクトして接することは大事です。
いずれにしても、「年上の部下」は管理職が一人で引き受けるのではなく、職場のチーム全員でその人を受け入れていく。
つまり、「みんなで囲む」のが良いのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)