美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
「ルネサンス」ってよく聞くけど、ざっくりどういうこと?
──ところで…ちょっと聞きにくいんですが…「ルネサンス」ってなんですか?
別に聞きにくいことなんてないですよ~(笑)。そうですね、逆に「ルネサンス」ってどんなイメ―ジがありますか?
──うーん…なんか美しい芸術が生み出されていった…みたいなイメージです。
ピンポンピンポン! 素晴らしいです~♪ が、それはルネサンスの一面にすぎません。
ルネサンスとは日本語に訳すと「復活」とか「再生」という意味があるんですが、最も大切なのは「ルネサンスという思想の変化」が起きたことです。
──思想の変化…。あの、難しい話はNGでお願いします!!
大丈夫ですよ(笑)。
古代ローマの時代は街中に素晴らしい彫刻が溢れ、人間が芸術や学問を楽しんでいた時代でした。
しかしその後、キリスト教が誕生することでその価値観が変わってしまったんです。
──変わってしまった! どう変わったんだろう(ドキドキ)。
キリスト教の根本には、「現世は楽しむものではなく、私たちの体に流れている『原罪(アダムとイブが犯してしまった罪)』を贖うものだ」という考え方があります。
よって、「人間が人間らしく楽しめなかった時代」と言ってもいいでしょう。
それが1000年くらい続くんですね。
──1000年! 長ーっ!
ですよね。でも他国との交流や商業の発達に伴ってそのキリスト教的な考え方が雪解けを起こしてきて、「ちょっと神様中心すぎたよね、もっと人間らしく楽しもう!」という考え方が芽生えてきたんです。
そして、人間が人間を楽しんでいた時代への復活、古代ギリシャや古代ローマの文化を再生する、「ルネサンス」が行われたんですね。
──「復活」とはそういうことですか!
ちなみにその一環で絵画はずいぶん美しくなったんですよ?
──どういうことですか?
ルネサンス以前の絵画は神様中心の世界観なので、神様を描くにも「荘厳さ・重厚さ」が最も重視されていたんです。
それが「人間らしく」というモットーの下に、神様も私たちに近づくように親しみやすい姿で描かれるようになりました。
そして私たちの住む現実世界を舞台として映し出された絵画は、遠近法が整えられ、プロポーションも磨き上げられ、いわゆる「美しい絵画」というものが作り上げられたんですね。
──なるほど! 僕が考えるルネサンスのイメージはその美しさのことだったんですね!
そうですね! そうして、「ルネサンス=美しい芸術」と結びつくことになりました。
ただそれはあくまでもルネサンスの一面です。本当は人間の生き方を変えた変化だったんですよ。
──なるほど。思っていたよりも深い話でした。美術ってちょっと面白いかも!
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)