それができるようになるとどうなるか?ナナイはこんなすごいことを言っています。「世界が別様に見えてくる」と。これが、一見意味がなさそうなものに熱狂するということの最大の意義なんです。

 ここでは、分散的な注意を向けることによって、どれだけ物事に熱狂できるのかを体験してもらいましょう。

 まず、一見無駄なことをやっている人を描いたこんなイラストを見てください。

「将来の夢がない」中高生の悩みにロッチと子羊がスバリ回答…その視点はなかったわ!まずい!韓国ドラマを見すぎて、朝になっちゃった!原稿の締切が、今日なのに!(筆者の実話)。同書より

 ここから想像できる、意味のある行為を分散的な注意で見つけてみましょう。

 例えば、「夜中に起きていたことで、隣の家の火事に気がつき、隣人を助けることができた」。あるいは、「朝まで家に明かりがついていたことで、防犯に役立った」ということもありえますね。

 確かに、イラストの中心に描かれたものだけを眺めても、単に「困っている人がいる」という理解に留まるでしょう。でも、旅行好きな人が分散的な注意を向けた場合、「この人物は、素敵なロケ地を知って、実際に行ったに違いない。そして、自然の豊さかにふれ、景観保護の重要性を知ったかもしれない」という展開を考え、このイラストに自分だけの価値を見出すかもしれません。

 また、演劇に興味がある人だったら、「この人物は、ドラマの脚本家の別の作品を見て、また新しい物語の構成を勉強したのではないか」と思うかもしれません。

 分散的な注意でイラストを見たこの二人には、もうこれは「困っている人がいるイラスト」ではなく、まったく別の作品に見えているのです。どうですか?このイラストに興味が湧いてきませんか?

 きっと自分ならではの「分散的な注意」の向け方があると思います。そのことにまだ気づいてないだけです。逆にいうと、そのことに気づきさえすれば、自分だけの価値が見つかり、世界が別様に見えてくるに違いありません。

悩みへの答えの一例
興味を持つことが難しそうなものでも、自分の視点で面白さを見つけて、つっこみを入れてみよう。そこに熱狂できるきっかけがあるはず。