2024年からスタートした新NISA(少額投資非課税制度)を中心に、資産運用のメリットや活用法について、ファイナンシャルプランナー深田晶恵さんと、ロボアドバイザーサービスのウェルスナビ代表取締役CEO柴山和久さんが本音で徹底討論した「新NISA完全活用法」セミナー(23年12月21日開催)より、制度の特徴やメリット、口座開設先の決め方などにかんする解説をダイジェストでご紹介します。

ビジネスパーソンPhoto: Adobe Stock

――2024年からスタートする新NISAについて、基本も含めてポイントを絞ってご説明していただきます。まず、新NISAのメリットや旧制度からの変更点について、財務省ご出身で金融制度にも詳しい柴山さんにご説明をお願いします。

柴山和久さん(以下、柴山) まずNISA制度のメリットとして、「売却益に税金がかからない」ということがよくいわれますよね。たとえば100万円投資をして150万円に値上がりしたとき、売却して利益50万円が確定すると、通常はそれに約20%(10万円)の税金がかかります。このとき税金がかからない、というのがNISAのメリットです。逆に元本100万円から80万円に値下がりして売却した場合は、利益が出ていないので税金はかからず、NISAのメリットもないということになります。あくまでNISAを使ったメリットは利益が出た場合なので、リスクを抑えて長期的な目線で運用することが重要になります。

NISAは24年1月から新しい制度になりました。従来は「つみたてNISA」と「一般NISA」という2つの制度があり、それぞれ約1000万人が利用されていました。24年からは新制度下で「つみたて投資枠」「成長投資枠」の両方が使えるようになっています。1年間で投資できる金額が大幅に増えて合計360万円になり、さらに生涯で投資できる元本が合計1800万円(うち600万円は積み立て投資枠専用)になりました。また、今までのNISAは非課税期間が決まっていましたが、新しいNISAは恒久的制度ですので、いつでも始められて、いつでも止めたり再開もできるなど、自分のペースで制度を利用できるメリットがあります。

今までの制度では、「つみたてNISA」の年間非課税枠40万円をどう使い切るか、に注目がいきがちでしたが、新NISAでは使わない枠は翌年以降に復活されますし、自分自身のペースで利用できる優れた制度に進化したと考えています。

――新NISAを活用しない手はない、ということですよね。その場合、どこに口座をつくればいいか、というご質問も多く寄せられています。深田さん、アドバイスをいただけますか。

深田晶恵さん(以下、深田) NISA口座をどこに作ればいいのか、というのは、本当によく聞かれるご質問です。「口座を開く」ことがゴールになっている、という方は危険かなと思います。発想として、「どこの店がいいのか」ではなく、「欲しいものを売っている店に行く」と考えていただきたいです。

口座を開く先として、大きく分けると、証券会社と銀行があります。さらに細かく言えば、証券会社も銀行もそれぞれ、インターネットと実店舗がありますし、そのほかにロボアドバイザーという選択肢もあります。

「欲しいものを売っている店」を探すには、まず買いたい商品のジャンルは何か、を考えてみてください。投資信託のほか、個別株やETF(上場投資信託)、海外のETFも買いたいのか? たとえば、個別株は銀行では原則買えませんから、個別株を買いたい方は銀行に口座を開かないほうがいいですね。「給与を振り込んでもらう銀行の口座が安心」という人も多いですが、たとえば最大手の銀行であっても、一番売れている投資信託はネットバンキングでは買えても実店舗では買えない、ということがあります。口座を開きたい先で自分が欲しい商品を売っているのか、事前に調べることが大切です。

口座の変更もできますが、非常に面倒ですから、最初によく考えておくことをお薦めします。そのほかにも、口座を開く先を決めるにあたって検討したいのが、

「品ぞろえ」は多ければいいのか? 意外と多すぎても迷います。
「入金方法」は? これも意外と重要で、大手のネット証券で系列の銀行にお金を入れておかないと、別の銀行の給与振込口座から手数料無料では移動できないこともあります。
「ポイント」は貯まるのか? これも意外と重視される方が多いです。

などでしょう。

まず、ご自身のニーズを書き出してみて、それに合わせたところにしましょう。「ダイヤモンドZai」をはじめマネー雑誌に比較表もよく出ていますから、そういう資料を参考になさってください。投資全般をお任せしたい方はロボアドバイザーも選択肢になると思います。

柴山 ロボアドバイザーの場合、長期・積立・分散型の投資をNISAでやりたい方にはぴったりだと思います。逆にロボアドのデメリットは、長期・積立・分散以外はできないところです。

深田 個別株は買えませんしね。

柴山 個別株が買えない点も、人によってメリットでもあり、デメリットでもあるとは思います。老後資産をなるべくリスクは低く着実に育てたい方にとってはメリットですが、個別株投資をやってみたい人にとってはデメリットになります。

深田 たしかに、ご夫婦の間で意見が割れていて、ご主人は個別株を買いたいけど、奥様はあまり個別株を買わせたくない、という場合もありますから、そういう場合は個別株をあえて買えないところに口座を開くというのもありかな。よく話し合っていただいて、買いたいものが買えるところに口座を開いていただくといいですね。