シェルターが普及するイギリスとイスラエル
地下鉄構内にガスマスクを備える韓国

 1月2日のNHK報道によれば、2023年に北朝鮮が発射した弾道ミサイルは18回25発。過去2番目に多い発射回数となった(最多は2022年で、発射は31回59発)。

 これほど具体的な軍事行動が続いているにもかかわらず、日本人の危機感は薄い。日本では核シェルターどころか通常能力型の弾道ミサイル攻撃へのシェルター設置がやっと始まったばかりだ。それに対し、他国の状況はどうなっているのだろうか。

 イギリスでは1948年当時の民間防衛法に基づき、シェルター建造が地方自治体に義務付けられていた。その後も民間緊急事態法に基づき、防空シェルターや地下鉄シェルターが新たに設置されている。

 イスラエルでは1992年改正の市民防衛法に基づき、公共シェルターや個人住宅への退避施設が多数建造されている。公共スペースには多人数収容可能な大型シェルター、個人宅には家庭用セーフルームがある。常にハマスからの軍事攻撃にさらされてきたイスラエルはシェルター設置に余念がない。

 韓国では2023年8月、6年ぶりとなる全国一斉の空襲避難訓練が行われた。ソウル中心部でも信号が赤く点滅して交通規制が行われ、緊急車両の経路確保訓練が行われた。6年前までは毎年「民防衛訓練」の日が決められ、空襲サイレンが鳴り、一斉に車が止まり、市民が地下鉄や建物内に移動する。

 戦争という緊急事態に備えて、全省庁や自治体、軍、警察、企業、そして市民が、自らの安全のために何をするのかを点検する日である。このような軍事攻撃に対する大がかりな避難訓練は日本にはない。

 韓国の地下鉄は緊急時に使用する避難施設として、いつ空襲が起きても、毒ガスが放出されても、心配がないようにガスマスクが駅構内に設置されている(下の写真)。

ソウル市内の地下鉄駅構内にはガスマスクと酸素ボンベなどが置かれているソウル市内の地下鉄駅構内にはガスマスクと酸素ボンベなどが置かれている(照井資規氏提供)

 また、空襲で電気が遮断された場合を想定しての懐中電灯、水、鼻や口を覆うコットンタオル、そして酸素ボンベが置かれている(下の写真)。韓国では軍人が中心になって、真っ暗になった地下鉄構内で市民を安全な場所へ誘導する準備ができている。

ソウル市内にある非常用懐中電灯設置棚ソウル市内にある非常用懐中電灯設置棚(照井資規氏提供)

 このように、当たり前のようにシェルターがある国は少なくない。国によっては、韓国のように、空襲を想定した必要物品を地下鉄や人通りの多い建物内に設置している。救命処置のためにAEDを置くように、武力攻撃時に使う物品を手に取れる場所に常備しなければ国民の命は救えないのだ。