ウクライナにある地下鉄駅の
深度は実に100メートル超
日本各地でも、東京都に続き、シェルターの設置や武力攻撃時の避難場所として地下鉄などを指定する動きが始まっている。斉藤哲夫国土交通大臣も2月8日、弾道ミサイル攻撃に備えた地下鉄駅シェルター化にむけて鉄道事業者に協力の呼びかけを積極的に行うと述べた。
地下鉄は大半の爆風や衝撃波から身を守れる頑強な構造物だ。専用の地下シェルターを持たない場合は、地下鉄や共同溝など、すでに地下に造られた構造物の中から、想定される危険に対して十分な強度がある場所を選定するしかない。
兵器の進化は著しいが、その進化は建造物を破壊する力の大きさを競う方向ではなくなっている。地下や強固な建造物の中に潜んでいる要人や軍人を効果的に殺害することで戦争を有利に進めることを考えるようになった。
地上にある建造物をどれだけ破壊しても、その国の意思決定をつかさどる人物や軍人が生きていれば、周辺諸国から戦車や航空機、銃弾等が提供される。戦おうとする人がいれば、モノを破壊したところでモノの代わりは手に入るからだ。
そこで考えられたのが中性子爆弾である。中性子爆弾の破壊力は大きくないが、地下深くにいる人間にまでその放射線が到達するため、殺傷能力は高い。地下100メートルに潜む人すら殺害することができる。
上図の通り、ウクライナの首都キーウにあるアルセナーリナ駅の深度は実に105.5メートル。日本では大江戸線の六本木駅や千代田線の国会議事堂前駅もかなり深いが、比較にならない。
日本はまだまだ本気度が足りない。やらなければならないことは山ほどある。核兵器に囲まれた日本はリスクが最も高い国の一つだ。爆撃の恐ろしさを知り、それから身を守るために何が必要か、何を準備しなければならないか。私たちは真剣にこの問題に取り組まないといけないところに来ている。
(国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表 小笠原理恵)