「出島型スタートアップ」とは?
障壁を取り除く新たな動き

 最近増えているのが、先代が社長のうちに後継ぎが家業とは別会社を作ってその代表となり、家業のリソースを使いながら新規事業に取り組む形だ。山野氏はこのような新会社を「出島型スタートアップ」と呼ぶ。鎖国時代、外国との貿易拠点だった長崎の出島になぞらえて命名した。

 後継ぎが新規事業を発案しても、家業の範囲内で行うのは障壁や課題があり、進めるのが難しい場合がある。別会社で、しかも決定権が後継ぎにあれば、事業化のスピードもアップする。

 資金調達の面でもメリットがある。多くの同族事業は安定的な経営を好むため、銀行からの融資を重視し、第三者の資本が入ることを好まない傾向があるが、新会社ならVC(ベンチャーキャピタル)など別の資金調達も選択肢となる。

 また、元々の家業だと入ってもらうのが難しかったDX人材や、ベンチャーマインドを持った若手人材も、会社のブランディング次第で採用しやすくなるだろう。

「あくまで家業の存続のために行うことなので、先代としっかり連携して、それを周囲にもアピールすることが成功の鍵。家業そっちのけで別のことをやっていると言われないよう、継いだ後にホールディングス化することを視野に入れて、会社を育てていくことが大事です」

 起業のように好きなことをゼロイチから始めるのとは違って、事業承継は基本的に、今あるものを守りつつアップデートしていかなければならない。元々家業は興味がない分野の事業かもしれないし、中に入れば理不尽なこともたくさんある世界。しかし視点を変えれば、自分次第で無限大にビジネスが広がる。

「後継ぎたちにとって、時代は追い風モードです。ぜひその波に乗って、家業を盛り上げてください」