しかし、28ナノプロセスをiPhoneにあてはめると、iPhone5のチップセットがちょうど28ナノであり、今から10世代前のiPhoneの最新技術ということになる。他方で、TSMCは建設が遅れているものの、米国アリゾナ州に3/5ナノプロセスの工場を作るとしている。この事実だけを見ると、「日本では古い技術で生産し、最先端の技術は米国に持っていかれて非常にけしからん」と見えなくもない。

時代遅れの技術ではない
22/28ナノプロセス

 しかし、22/28ナノプロセスの生産はビジネスの面から見ると非常に妥当なものと言える。半導体はすべてが最先端である必要はない。家電製品に用いられる多くの半導体は40ナノプロセスで作られており、その意味で、家電製品を多く作る日本がこれまで40ナノプロセスまでの製品を生産していたのは一定の意味があるといえる。

 さらに、28ナノは自動車でよく使われる半導体である。30年ほど前の自動車にはせいぜい1~3個の車載コンピュータ(ECU)が装備されていただけだが、現在では100以上のECUが使われている自動車も多く存在する。今後自動運転技術が進化すれば、さらに自動車向け半導体の製造は増えることが確実だ。

 また、JASMの隣にはソニーセミコンダクタソリューションズのCMOSイメージセンサーの工場がある。CMOSイメージセンサーは表面の光を電気信号に変えるセンサーチップと裏面のセンサーを制御するロジックチップから成り立っており、ソニーはセンサーチップを自社で製造するが、ロジックチップはTSMCから調達をしている。今後のソニーのCMOSイメージセンサーには、22ナノプロセスのチップが採用されると見られる。こうした状況を踏まえると、JASMにソニーやデンソーが出資している意味が見えてくる。

 近年、半導体不足が話題になったが、このときに不足していたのが22/28ナノプロセスのチップだ。半導体不足とはいえ、半導体製造には莫大な投資が必要なので、安易に供給を増やすことはできない。半導体不足で家電やIT製品だけでなく、自動車の生産にも影響が出た。ソニーのCMOSセンサーは現在世界第1位の数量を誇っているが、2位のサムスン電子の追い上げも激しい。サムスンは半導体メーカーでもあり、ロジックチップも内製している。