実刑か執行猶予か
懲役4年という「微妙な求刑」

 以上が初公判から第4回論告求刑までの概要だが、検察側が起訴した事実関係については弁護側も争う姿勢を見せず、争点は暴力行為法違反罪が成立するか否かだけ。弁護側は初公判で常習性を否認し、最終弁論では「法の趣旨」からそもそも適用すべきではないと訴えた。

 弁護側がここにこだわるのは、実刑か執行猶予のどちらに転ぶのかの焦点が、まさにこの1点に尽きるからだ。

 初公判の証拠調べでは、福谷さんが「1億円以上」と具体的な損害額を提示。綾野さん側もファンクラブの退会が約2000人に上り、CMスポンサーの打ち切りなどで事務所に1億円以上の損害が生じたと明らかにされた。

 被告が収益を積み重ねる中、被害者側は巨額の損失を出していたわけだが、情状酌量を訴える分かりやすい方法は「金銭的な弁済」であるにもかかわらず、公判で損害を賠償したとの言及はなかった。弁済するだけの「金がなかった」か「被害者側の怒りが収まらず『塀の向こうに行ってくれ』と交渉を拒絶されたか」のどちらかしか考えられない。

 検察側の「懲役4年」というのは、実は微妙な求刑だ。一般的に司法関係者の間では「判決は求刑の7~8掛け」と言われる。執行猶予が付く条件は刑法25条の規定で、懲役3年以下でなければならない。

 そのため、検察側が懲役4年以上を求刑した場合は「実刑」、同3年以下の場合は「執行猶予」を求めているサインと言われる。その間の同3~4年は「裁判長にお任せ」と言うことになり、被告や弁護側は判決までやきもきする日が続くわけだ。

 例えば両親に対する自殺ほう助罪に問われ、昨年11月に執行猶予付き判決が言い渡された歌舞伎俳優の市川猿之助さんの場合は求刑が懲役3年で、司法担当記者の間では結果は最初から分かっていたとされる。