現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。
「マインドフルネス」をいつでも実践する
マインドフルネスを実践すれば、脳を鍛え直してメンタルをもっとうまく管理できるようになる。
著名なマインドフルネス研究者であるジョン・カバット・ジンが定義しているように、マインドフルネスとは、「刻一刻と変化する経験に、いまこの瞬間、評価や判断を加えることなく、能動的な注意を向ける」プロセスだ。
マインドフルネスの介入は、何かを変えようとするのではなく、いまこの瞬間の経験を受け入れる意識を養うことに重点を置く。
マインドフルネスを実践すると、迷走神経の活性度が上がり、副交感神経モードに切り替えるよう身体に合図が送られる。
自分がどう感じているかをより意識して、自らの思考と感覚を観察できるようになるため、マインドフルネスはメンタルフィットネストレーニングと言える。
研究によると、マインドフルネスに基づくストレス軽減法には、身体の自然免疫反応を高め、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)を低減するなど、多くの健康効果がある。
マインドフルネスに基づく治療には、特にうつ病や痛みの症状に対して心理学的介入や精神医学的介入と同程度の効果が期待できるものもあり、禁煙やその他の依存症克服を試みている人にも役に立つ可能性がある。
マインドフルネスを実践するのにトレーニングは必要ない。
一日中マインドフルでいようと毎朝意志を固めるだけでいい。意志は、自分の一日をこうしたいと願う方向へ放つ矢のようなものだ。一日を通して、意識が過去や未来に向いていると感じたら、いまこの瞬間に集中し直すように心がけよう。
歯磨きなど特定の活動をしているときも、マインドフルでいることを選択できる。
水を出し、歯ブラシに歯磨き粉をつけ、口の中を隅々まで磨いている感覚など、歯磨きのすべてのプロセスに注意を向けてみよう。
犬の散歩や運動をしているとき、あるいは昼食を食べているときにもこれを実践できる。心を落ち着け、腰を下ろし、間をおいて、呼吸し、食べ物をしっかりと味わおう。
そのほか、洗濯中や、行列に並んで待っている間、交通渋滞に巻き込まれているときなど、マンネリや退屈を感じる瞬間はいつでも、マインドフルネスを実践するチャンスだ。
退屈という考えから離れて、いまここに存在しているという感覚に意識を向けてみよう。
四六時中そうする必要はない。ただ時折立ち止まって、自分の人生のいまこの瞬間に心を置くようにしよう! それがマインドフルネスだ。難しいことじゃない。
私は外出するたび、何をしていても、どこへ行っても、少し時間をとって周りを見回し、木々や自然の色彩、風、肌に感じる太陽のぬくもりに注意を向ける。
こうした行動によって、自分の人生のいまこの瞬間により心を置けるようになった。
マインドフルネスは、自分の思考や感情、情動、反応、トリガー(心身が反応するきっかけ)に対する意識を高める。物事への反応の仕方に自分の意向を挟む余地をつくれるようになる。これは強大な力だ!
あなたは受け身である必要はない。人生のあらゆる瞬間を楽しむ必要もない。いい気分になれるものを常に追い求める必要もない。実際のところ、そういう意識こそが多くの人を不幸にしている。
どのように感じていても、いまここに心を置くことさえできれば、ネガティブなものも含め、あらゆる感情や思考、経験に動じなくなり、これらがあなたに対してさほど大きな影響力を持たなくなる。
(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)