森岡毅率いる刀の新テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」で完全没入体験してみた!「ザ・シャーロック―ベイカー街連続殺人事件―」 SHERLOCK HOLMES, DR. WATSON, and are trademarks of Conan Doyle Estate Ltd.®

リピーターとインバウンド、2つの課題を考える

 よく言われることだが、テーマパーク成功の鍵はリピーターを増やせるかどうかにかかっている。イマーシブ・フォート東京の場合はどうだろうか。

 前述のように「ザ・シャーロック―ベイカー街連続殺人事件―」を体験した後は、「物語の全貌を理解するには、何回も通わないとな」と 思っていた。
「第五人格 イマーシブ・チェイス」は、6人1グループで参加し、それぞれに与えられたミッションをこなしながらゴールを目指す緊張感あふれるアトラクションだ。しかしどう動いていいのか今一つのみこめず、逃げ回っているうちにゲームは終わってしまった。「今度やるときは、もうちょっとマシな動きができるはず」と思った。

「イマーシブ・ストーリーズ~誰も知らなかった本当のヘンゼルとグレーテル~」は、入場前に「ヘンゼルとグレーテルの視点」と「魔女の視点」どちらかのコースを選ばなくてはならない。私は「ヘンゼルとグレーテルの視点」を選んで、もちろん面白かったのだが、物語に何か含みがあるように思えた。「次回は、魔女の視点も見てみたいな」と思った。
 思い返せば、ほとんどのアトラクションで自然と「今度来るときは」という気持ちにさせられていたのだ。この時点ですでにリピーター決定だろう。さすが森岡毅率いる刀だ。

 現在は全部で11のアトラクションが展開されている。1日で全て回るのは物理的に不可能だ。しかもライド型アトラクションと違って外からはどんなアトラクションなのか想像がつかないから、あれもこれも参加したくなる。加えて、ライド型アトラクションのように新しい施設を建築するための巨額の資金や時間はかからない。演目を変えていけばいいだけだから、新しいアトラクションを次々と投入できる強みがある。リピーター対策は研究し尽くされていると言って良い。

 森岡氏は、「インバウンドも呼び込みたい。イマーシブ・シアターをこんなふうに集めたテーマパークは世界初です。世界中から感度の高いお客さんが集まるようにしたい」と語っていた。
 そうなるとただ一つ、心配なのは「言葉」の問題だ。それに対応する策は考えられているのだろうか? 広報に尋ねたところ、「言葉が重要になるアトラクションでは、英語の翻訳機を貸し出すようにしています。すでに英語は完備、中国語、韓国語などに対応しているアトラクションもあります。今後順次拡大して対応していく予定です」という回答があった。さすがに抜かりはない。

 心地よく疲れた足を引きずって会場を出ると、眼下にはオープンしたばかりの「シティ・サーキット・東京ベイ」が広がっていた。その向こうには建築中の「トヨタアリーナ東京」が見える。かつてヴィーナスフォートがあり、巨大な観覧車があり、トヨタメガウェブがあったこの地は、急速に変化している。まさに生まれ変わる最先端の都市・東京である。外国人が憧れて押し寄せるのは間違い無いだろう。

 森岡氏の言葉が蘇った。「いずれ海外に打って出たい。この施設で世界で初めて練り上げる運営ノウハウを海外でも展開して、そこで稼いだ収益を日本に還元したいのです。少子高齢化が進む日本では、国内の市場はシュリンクする一方です。海外からお金を環流させる仕組みを、私たちの世代が作っておかねばならない」
 マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に。刀のコンセプトはブレない。