ユーザー・顧客を飽きさせない環境づくり

「推してくれる人」とは「ファン」よりも長く、そして深く関わってくれる存在である。それはこのLTVの考え方でいう「ユーザーの継続性」に関わる部分である。

 この「継続性」に大切なのは、いかにユーザー・顧客を飽きさせない施策を行うか。まさに「応援されるコア」と「サテライト」の循環を上手くつくり、いかに行動を促すか、ということが重要なのだ。

 今の「推し文化」における、「対象を支えたい、応援したい」という気持ちをもとにしたSNSでの自主プロモーション活動や、CDの購買運動、聖地巡礼や二次創作物制作などは、LTVにおける「ユーザーの収益性」に関わる部分である。

 つまり、収益性の側面では「この人を応援したい」「支えたい」「他の人に知ってもらいたい」と感じてもらえるような「推し」の価値を打ち出し、応援活動をスムーズかつ積極的に行いやすい環境をつくることが重要となってくるといえる。

 アイドルで例えると、この人たちのコンサートに高い金額を払ってでも行きたいと思わせるほど、本業「アイドル」としての価値を高め、アピールすることができるのか。また、グッズやファンイベント、展覧会などの企画、チケットなどの販売を通して、人々が応援の気持ちを表すことができる環境を整えることができるのか。推しへの愛を伝える動画コンテストや、SNSの投票企画などを通じた、「応援環境」を整備できるのか、などがあげられる。

変化の激しい今の時代にこそ「推し」が力に

 この継続性と収益性から構成される高いLTVの獲得を通じて、自社のビジネスを「推し化」し「顧客から長く愛される」ビジネスを形成することこそが、この不確実な社会で大切な力となってくる。

 不安定で変化が激しいことが特徴といわれる現代においては、テクノロジーの変化によって「機能として求められるもの」は急速に変化し、昨日まで求められていた機能が新しいテクノロジーによって取って代わられるということも少なくない。

「推し」は「ファン」よりも、行動力と熱狂度を持って長期的にビジネスを応援してくれる存在である。

 例えば、あなたのビジネス機能が新しいテクノロジーに代替えされてしまったとしても「推してくれる人」は、新しい機能の使い方を提案、シェアしてくれるだろうし、もし何か製品やサービスに問題があった時も、すぐに他の製品に乗り換えるのではなく、間違いを指摘し改善を促してくれるアドバイザリー的な立ち位置としてビジネスに伴走してくれる。