つまり、お菓子であったキャラクターたちがトイになることで、キャラクターとして人々に「推される存在」へと変化したのだ。その勢いに乗り、ギンビスは動物キャラクターグッズの製作・販売を進め、一気に10代20代から注目を集める企業となった。

 実際データからもその大きな影響力を伺うことができ、ギンビスの売上は2年連続で、前年比2桁増収。2022年度は2020年度の180%を達成した。

「たべっ子どうぶつ」のキャラクターのグッズ化は、キャラクターがカラフルに色分けされていたこともあり、「推しカラー」文化と相性が良かったともいわれている。

 しかし、「推しを利用しよう」「推し活をビジネスに利用しよう」という考え方は簡単に実現できるものではない。なぜなら、「推してくれる人」、つまり応援してくれる顧客は、簡単には得られない貴重な存在だからだ。彼らの好意は、ただ単に商品やサービスを購入するという以上の意味を持ち、その関係性を築くためには相応の理解と努力が必要となる。

なぜ今ビジネスに「推し」が必要とされているのか

 これからは、エンタメ業界に限らず、あなたの関わるビジネスに「推してくれる人」が必要である。

 それは「推し」という要素が、常に企業側が消費者に何かを与え続けなければいけないという従来のビジネスの考え方を覆す、「自走式ビジネス」を実現するものであるからだ。そして、それを実現するのが「熱狂的で行動的な応援者」と訳される「推してくれる人」の存在なのである。

 まず、ビジネスにおける「推し」を考えるうえでは、LTV (Life Time Value) の考え方を知っておきたい。

 LTVとは、いかにユーザーに自社のコンテンツや製品、サービスを長く使ってもらえるか、いわばユーザー一人あたりのコンテンツ・製品・サービスの寿命(Life Time)と、その寿命の中でどれだけの価値を感じてお金を使ってもらえるか(Value)の掛け算でサービスの経済圏を表すという考え方である。

 つまり、「ユーザーがいかに長く顧客として関わってくれるか(継続率)」×「ユーザーがいかに価値を感じお金を支払ってくれるか(収益性)」。それぞれの要素を同時に引き上げていくことが大切である。