心臓と血管の健康を維持できる
血圧値の上限は130/80mmHg

 日本高血圧学会は、「高血圧治療ガイドライン2019」で、血圧値とそのほかのリスク因子(予後影響因子)の組み合わせで大血管病の発症リスクを知る目安を公表している(下表参照)。

 年齢が65歳以上または男性で、脂質異常症もしくは喫煙者であれば、血圧値が130~139/80~89mmHgでも大血管病リスクは「中等」になる。脂質異常症と喫煙二つがそろえば「高」リスクだ。

 リスク因子が多い人は、130/80mmHgが心臓と血管の健康を維持できる血圧値の上限。まずは血圧の安定と抗血管老化を目的に、後述する血管に良い栄養素を積極的に取ろう。数カ月後も血圧が目安まで下がらなければ、降圧剤の服用も視野に入れる必要がある。

コレステロール値で知る
今後10年間の大血管病リスク

 動脈硬化は「悪玉」LDLコレステロールの変性物であるプラークが血管の内膜にたまり、血管が硬くなった状態だ。動脈硬化を来した血管では、老化が生理現象以上に進み、もろく破れやすい。

 何らかの刺激でプラークが破裂したと仮定しよう。すると、すぐさま血小板が出血を止めようとして傷口に殺到。あっという間に血栓が形成され、傷口を覆い隠す。

 血管内皮細胞の機能が正常なら、血管が修復された頃合いで血栓を溶かすシステムが発動する。しかし、内皮機能が老化していると、なかなか血栓の掃除が始まらない。血栓は流れてくる血球を巻き込んで大きくなり続け、血管内腔が狭く、ときには瞬時にふさがってしまうこともある。

 心臓を取り巻く冠動脈でこれが生じた場合、狭心症や心筋梗塞を引き起こして突然死に、脳血管では脳梗塞やくも膜下出血で寝たきりにつながりかねない。ちなみに、厚生労働省の統計によると、要介護5(寝たきり)になる原因疾患の第1位は血管性を含めた認知症、そして第2位は脳血管疾患である。

 動脈硬化の怖いところは、血管が詰まって初めて、その存在が分かることだ。普段の生活で意識するのは難しい。

 日本動脈硬化学会は、血清LDLコレステロール値などから、今後10年間に大血管病を発症するリスクを推計するスコアを開発。自動計算アプリの「動脈硬化性疾患発症予測ツール これりすくん」が公開されている。次ページ表はそのアナログ版で、今後10年間に自分が大血管病を発症する確率を確認できる。