商談も一緒です。まだ契約するムードにもなっていないのに、最後のクロージングで「契約はされますか?」と、いきなり山場を持ってくるから契約に至らないのです。

 そこに至るまでのプロセスを見直さないといけません。

 フランスの哲学者、ルネ・デカルトは言いました。「困難は分割せよ」と。まさにこれが今回の答えです。

 契約に対していきなり「YES」をもらおうとするから緊張します。もっと小さく「YES」を分割して取っていくことです。

 たとえば、商談の冒頭で、「まず私がこの商品を扱うようになったきっかけを少しだけお話ししてもよろしいですか?」といった小さな質問で「YES」を取っていきます。

 また、商談を進めながら、

「ここまでのお話でなんとなくイメージはできましたでしょうか?」
「商談の機会をいただいたということは、少しはご興味をお持ちということでよろしいでしょうか?」

 と、「YES」と言っていただけそうな質問を展開していきます。

 さらに、商談を進めながら、

「もし購入するとしたら、効果が出そうなイメージはありますでしょうか?」
「仮にスタートするなら今月でしょうか?来月でしょうか?」
「そのときは一括払いをご希望されますか?分割をご希望でしょうか?」

書影『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)
桐生 稔 著

 こうやって契約に向かって、「YES」を刻んでいく。これを質問を使って行います。

 その上で、最後に「ぜひやりましょう」と背中を押す。

 いきなり契約を持ち出すのではなく、契約するイメージを顧客と一緒に積み重ねていくのですね。

 最後まで契約の話を一切しないのは、8月31日から夏休みの宿題を始めるようなもの。それは焦ります。

 序盤から小さなYESを重ねていけば、最後のクロージングで優雅でいられます。商談開始から、既にクロージングは始まっているのです。