遅れた自主回収、大企業の「致命的な判断ミス」

 2月6日、小林社長が回収の覚悟を決めてから、実際に小林製薬が自主回収を発表したのは3月22日だ。驚くなかれ、トップが「覚悟」を決めてから、それを実行に移すまでになんと約1カ月半も時間を費やしているのだ。ちなみに、大阪市保健所と消費者庁への相談も3月22日の発表直前だったという。

 2月6日の「覚悟」は、なぜこんなにもたっぷりと寝かせられたのか。

 会社側の説明によると、自主回収が遅れた理由は「人手不足」だ。記者会見で渡辺淳執行役員は「調査にかける人員が限られ、製品が原因で症状が起こったと特定できなかった」と説明しているのだ。

 ただ、これは一般消費者の感覚からすれば、「は?世の中をナメているのか?」とかなりイラッとくる説明だろう。

 厚労省や大阪市が激怒しているように、世間一般の感覚では入院事例も報告されている段階で、被害拡大を食い止めるためには、とにもかくにもまずは事実の公表をして自主回収をすることが「正解」だ。しかし、小林製薬は調査に1カ月半以上も費やして、公表を後回しにした。これを「致命的な判断ミス」と批判する評論家や専門家も多い。

 では、なぜ小林製薬ほどの大企業が世間の多くの人たちが「悪手」だと思う道へ突き進んだのか。なぜ誰もが真っ先に優先すべきだと思う「被害拡大防止」を後回しにしてしまったのか。