直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】知られざる事実…世界屈指のSDGs先進国だった日本の時代とは?Photo: Adobe Stock

作家は“教養お化け”
であるべき

ここ数年、TBS系『Nスタ』や日本テレビ系『真相報道 バンキシャ!』など、テレビの報道・情報番組にコメンテーターとして出演する機会が増えました。

テレビに出演するようになったのは、たまたまオファーをいただいたからですが、「知らない世界を見てみたい」という単純な興味もありました。

作家は“教養お化け”であるべきですし、知らない世界を知って損になることはありません。体験できることなら何でもやってやろう。その一心でテレビの世界に首を突っ込んだのです。

歴史をベース
にするコメント

実際に出演してみて、これまでの歴史の学びが、けっこう活かされることに気づきました。

何かの時事問題について、過去の歴史から近い出来事を引っ張り出し、日本人の変化したところ・変化していないところを語ると、とても喜んでもらえるのです。

やはり私には、歴史という切り口からのコメントが求められているのでしょう。

SDGs先進国だった日本

最近は世界的にSDGs(持続可能な開発目標)の関心が高まり、「日本のSDGsは遅れている」と評されることがあります。

北欧諸国が先頭を走っていて、その他の国々が後を追っているという構図で語られがちです。しかし、歴史を遡ると、日本ほどSDGsが進んでいた国はありません。

江戸時代には上水道もかなり整備され、日用品のほとんどがリユース・リサイクルされ、紙の再生も徹底して行われていました。

海外から江戸の町を訪れた人たちが、江戸の清潔な町づくりに驚愕していたのです。

江戸のエコな暮らしぶり

江戸期を舞台にした時代小説には、どの作品にも当時の生活が描かれていて、人々のエコな暮らしぶりが手にとるように伝わってきます。

つまり、SDGsの答えは、とっくに先人が出してくれているのです。

『家康、江戸を建てる』(門井慶喜 著)には、江戸という町が形成される過程での治水工事や飲料水の確保などが丁寧に書かれていて、非常に勉強になります。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。