イノベーション創出となるか
現段階での評価は未知数

 ラボの運営には宇宙航空研究開発機構(JAXA)や東京大学、大学発ベンチャー企業「ティアフォー」代表などの有識者が参加。オフィスにはヤマハ発動機、大成建設、NECなどそうそうたる顔ぶれが入居する。

 ラボという名称から研究開発拠点を想像するかもしれないが、実際にはオフィス区画7室と会議室1室を備えるオフィス棟と、打ち合わせコーナーやイベントスペースがあるコミュニケーション棟からなる、約350平方メートル、平屋の小規模な施設であり、ここで実際の研究開発をするというわけではない。

 ではどのように活用する施設なのか。開業日に開催された報道公開で、各社の担当者に聞いてみたが、社員を常駐させるわけではなく、週に数日、出張して業務するという。イノベーション創出ということで、ラボに入居する他業種・他社との接点を増やし、新しいアイデアを生み出すことが目的という。

 研究開発の最前線で、どのようにイノベーションが生まれているのか分からない筆者にとって、現時点では海のものとも山のものともつかないというのが正直な感想だ。それでも各社の担当者は、隣の部屋に話し合える「仲間」がいる意味は決して小さくないと言うのだから、リモート全盛の時代にあっても意義はあるのだろう。

 そしてラボから生まれるイノベーションは、入居者間だけでなく、JR東海にも実りをもたらすものでなくてはならない。そのモデルケースして同日に発表されたのが、JR東海と大建工業が共同開発した、東海道新幹線再生アルミと間伐材を活用した内装用ルーバーだ。

 これは新幹線の廃車体をリサイクルして製造したアルミ芯材に、さがみはら津久井産の杉を表面化粧材、火山性ガラス質材料(シラス)など自然界にある無機素材を主原料とした不燃基材「ダイライト」を化粧材基材として採用し、木材の柔らかさを演出しつつ、環境に配慮した製品とした。今後、駅施設での採用も検討しているという。

 しかし、重要なのはこれからだ。ラボを起点に新たなイノベーションが生み出され、それが相模原市、JR東海にも還元されなければ、ただのショールームで終わってしまう。また、ラボが駅周辺地域の魅力向上、価値向上につなげる必要がある。

 JR東海は他の中間駅でも地域の特性を踏まえて、まちづくりに参加・協力していきたいとしている。どうしても大上段に構えがちで、地域に冷淡な印象のあるJR東海だからこそ、地域の目線に立ち、語り合い、手を携えることがリニア事業に対する理解を得る唯一の道になるだろう。