政治家の仕事は
「コミュニケーション100%」である
まずはデータからお見せしよう。
以下のグラフは、2007年に米イリノイ大の経済学者、ディアドラ・N・マクロスキー教授が行った「北米の産業社会において、果たしてどれだけの割合が、言葉によって他人とコミュニケーションする行為に使われているのか」という大規模な分析の結果である。
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これを見ると、実に米国の労働者全体での労働時間のうち19%が伝達・説得行為に費やされており、給与・報酬で計算すれば、国民所得の25%が伝達・説得によって生じているとされる(なお、ここでいう説得行為には、口頭によるコミュニケーション以外にも、文書によるもの、メールによるもの、動画によるものなども含まれる)。
このデータからも言葉は人々が仕事をする上で欠かせないものであることが分かるし、それを抜きにしても、言葉によってわれわれ人間が社会を構築してきたことは歴史を振り返れば自明だろう。
また、言葉が持つ役割というのは、この社会における要職になるほどに重くなる。
マクロスキー教授は同論文の中で、労働における説得の割合が高い仕事を調べている。
例えば、銀行員や教育者、作家、保育士などは仕事の50%以上が説得(コミュニケーション)になる。管理職やコンサルタントになれば、その割合は75%を超える。そして、弁護士、裁判官、政治家などの仕事は、事実上、その職務的役割はほぼ100%、コミュニケーションになる。
改めて考えてみると納得できると思う。
知事の仕事で、言葉や行動を通じて人に何らかの決定を伝えたり、指示を出したり、あるいは説得したりする以外の仕事が、あるだろうか――そう言われてみれば、確かに「コミュニケーションしかない」ことに気が付くだろう。
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そう、知事の仕事というのは、この社会の大変重要なキーポジションにあって、言葉を通じて人々を動かす仕事なのだ。
だとすれば、言葉の使用が不適切な者に務まる仕事ではない。場合によっては、その言葉で、社会に大変な混乱を引き起しかねない。
われわれが今、目の当たりにしていることこそが、まさしくそれを証明している。