オスもメスも体が大きい方が繁殖に有利なのは間違いありません。体が大きければ、オスは他のオスとのけんかに勝ちやすくなり、メスは多くの卵を産めるからです。

 しかし、体が大きくなった時にどれだけ得をするかが、オスとメスで違う可能性があります。カブトムシの場合、大きな体を持つことで得られる利益はメスよりもオスの方が大きいと考えられます。

 オスの場合、わずかに体が大きくなるだけでも、けんかの勝率が劇的に高まり、メスと交尾するチャンスがその分増えるからです。

 たとえば、体重が1.5倍になった時、メスは1.5倍多くの卵を産むのに対し、オスは3倍の数のメスと交尾できるとします。そのような条件のもとでは、進化の力により、オスの方がメスよりも餌の質に対する感受性が高くなるはずです。

体の大きさは年ごとに大きく変わる
その変動幅はオスのほうが顕著

 毎年カブトムシを採り続けている人は気付いているかもしれませんが、野外で採集される成虫のサイズは同じ場所でも年によって大きく異なります。

 私も、山口県山口市や茨城県つくば市の雑木林で、数年間にわたって、カブトムシをたくさん捕まえ、体の大きさを記録してきました。そのデータを見返すと、体の大きさは年によって不規則に大きく変動することが分かりました。

 小さな個体ばかりが採れたと思ったら、その翌年には大きな個体ばかり採れるようになったり、あるいはその逆のことが起こったりするのです。

 このような体の大きさの年変動も、幼虫期の餌の質の違いによるものが大きいと考えられます。大型の個体は、人が作った腐葉土や堆肥のような栄養たっぷりの環境で育った可能性が高く、たまたま人がそのような場所をたくさん作った場合は、その翌年に周辺で大きな成虫が多く見られるようになるのでしょう。

 また、野外で採集された個体の大きさを測ると、オスの方がメスよりも年による変動の幅が大きいことが分かりました。これは上で説明した飼育実験の結果とも合致します。

発酵の進んだ餌を見つける実験で判明
蚊と同じく二酸化炭素が手がかりか

 カブトムシの幼虫の移動能力はそれほど高くないので、質の悪い餌場で孵化したとしても、隣の餌場まで移動するというわけにはいかず、自分が生まれた場所で生きていくしかありません。

 しかし、一つの餌場の中の条件が完全に一様であるとは考えにくく、好適な、あるいは、ましな場所が局所的に存在するはずです。幼虫は土の中でそのような場所を見つけ出すことができるのでしょうか。簡単な実験で確かめてみることにしました。