3月初旬以降、金相場は最高値更新を繰り返した。中東での紛争激化に伴う地政学リスクの高まりや米国の利下げ観測がその背景にあった。ただ、弱気材料に対する反応が鈍く上昇スピードがやや速すぎた。今後地政学リスクが緩和するような状況になれば、相場は調整する懸念がある。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 芥田知至)
米利下げ観測や
中東情勢を巡り一進一退
金相場は、2月半ばに1トロイオンス当たり1985.09ドルまで下落した後、2000ドル台を維持して推移した。3~4月は史上最高値の更新が相次ぎ、4月12日には2431.29ドルまで上昇した。まず、年初からの動きを振り返る。
1月3日は、ISM(米供給管理協会)による12月の製造業PMI(購買担当者景況指数)が市場予想を上回って、為替市場ではややドル高が進み、ドル建ての金価格は割高感から下落した。
8日は、前週末に発表された2023年12月の米雇用統計の非農業部門就業者の増加数が予想を上回ったことが意識されて、FRB(米連邦準備制度理事会)が3月にも利下げを行うとの観測がやや後退して市場金利の上昇につながり、金利の付かない金は投資先としての魅力が減退し、売られた。
12日は、米英軍が紅海で商船への攻撃を続けるフーシ派の拠点を空爆したことで中東情勢が一段と緊張するとの懸念から安全資産需要につながったことや、12月の米PPI(生産者物価指数)が市場予想を下回って早期利下げ観測が強まったことが金相場を押し上げた。
連休明けの16日は、「利下げを急ぐべきでない」とのウォラーFRB理事のややタカ派的な発言が金相場を圧迫した。
18日は、安全資産需要から反発。17日にバイデン米政権がフーシ派を「特別指定国際テロリスト」に再指定したことや、パキスタン軍がイラン領内の過激派への空爆を行ったと表明したことが地政学リスク懸念を高めた。
2月以降も、地政学リスクや米国の利下げ観測の動向に左右される展開が続いた。その背景を検証しつつ相場の先行きを予測する。