「記者クラブ」が批判されているのに、スルーする大手メディア

 実は、今回のランキングは、単にジャーナリストが殺されたり、逮捕や拘禁されたりという言論弾圧だけを指標化としているわけではなく、「自己検閲」も問題にしている。

 つまり、現在の日本は本来、好き勝手に政府の批判ができるような国なのに、メディアやジャーナリストが保身や同調圧力、商業主義や権力への迎合という自己都合で、報道すべきことを報道していないーー。という「言論機関の自殺行為」について、国境なき記者団が、言論弾圧と同じくらい問題視しているのだ。

 それがうかがえるのが、今回のランキングにおける「日本」のカントリーシートにある以下の文言だ。

《The system of kisha clubs (reporters’ clubs), which allows only established news organisations to access press conferences and senior officials, pushes reporters toward self-censorship and constitutes blatant discrimination against freelancers and foreign reporters.》

 つまり、既存の報道機関のみ、記者会見や政府高官へのアクセスを許可する「The system of kisha clubs(記者クラブのシステム)」こそが、記者に「自己検閲」を促し、フリーランスや外国人記者に対する露骨な差別にもつながる諸悪の根源だと国境なき記者団は批判しているのだ。

 という話をすると、マスコミの皆さんは「言論の自由を守る我々が、自己検閲などするわけがないだろ」と不愉快になるだろうが、このランキングのニュースですらゴリゴリに「自己検閲」をしている。「報道しない自由」を行使して、まったく触れていない記者クラブメディアもあれば、日本テレビのように報道しておきながら「記者クラブ」にまったく触れないところもある。

 天下の朝日新聞になると、さすがに「黙殺」はしていないが、「記者クラブ制度がメディアの自己検閲や外国人ジャーナリストらの差別につながっているとした」(朝日新聞デジタル、24年5月3日)という感じで、記者クラブに対する「既存の報道機関のみ記者会見や高官へのアクセスを許可する」という指摘をバッサリと割愛している。

「それは新聞なので文字数が」とかなんとか言い訳が聞こえてきそうだが、「非記者クラブメディア」が以下のように、国境なき記者団の指摘を読者にわかりやすく伝えている。これと比べると、「ああ、やっぱり自分たちに都合の悪い話だからね」と思われてもしようがない腰の引け方だ。

《記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判している》(ハフィントンポスト日本版、2024年5月4日