トヨタは今期に計画する合計2兆円の未来投資のうち、人的資本への投資として3800億円(仕入れ先と販売店の労務費負担で3000億円)を投資する。また、モビリティカンパニーへの変革に向けた投資として、1.7兆円をマルチパスウェイ戦略の具現化(BEV・水素など)・トヨタらしいSDVの基盤づくり(ソフトウエア・AIなど)に投入する計画だ。
この巨額の未来投資を実行することにより、前期の最高益から一転、今期の営業益見通しは4兆3000億円と前期に比べ1兆円強、比率にして20%減の大幅減益を見込む。加えて、トヨタの今期連結業績は、先日国内全工場での生産出荷が再開したダイハツの業績動向と、統合計画がずれ込んでいる日野自と三菱ふそうの展開にも左右される。先行投資による大幅減益だけでなく、連結子会社の窮地の打開など課題が山積しているのだ。
トヨタの24年3月期の営業利益率は11.9%と高い収益性を実現したが、現在の収益構造を維持した上で今期に2兆円の未来投資を実行する。それによって今期業績見通しでの営業利益率は9.3%にダウンすることも見込んだ。昨年23年4月1日に豊田章男前社長から社長職を“禅譲”された佐藤社長が、就任から1年経過して初めて臨んだ決算発表は、「トヨタの稼ぐ力の強さ」を際立たせることになった。しかし、「意志を持ってこの踊り場で足場固めをする」と断言した佐藤社長からは、むしろ強い危機感を感じさせた。