人が不快に感じるのも当然な
エアーコンディショニング後進国

 しかし、この手の話を外国であまり聞かない。ある建築家が教えてくれたのは、「日本ではエアーコンディショニングをしていない」という話だ。エアーコンディショニングとは、建物内の空気の温度や湿度、清浄度などを調節して、快適な状態に保つことである。暑い室内を強風で冷ますと温度ムラができやすく、湿度調整が不十分となりやすい。そんな過酷な日本の状況では、人は不快に感じるのも当然だろう。

 だが、これは室内のエアコンだけが解決できる問題ではない。まず、室内の暑さの元凶を絶つ必要がある。それは、断熱性と気密性だ。断熱は外の暑さ寒さを断ち、気密性はいわゆるすきま風をなくし、これも外の影響を下げることになる。この家の基本性能は先進国では当たり前に義務化されているので、日本との格差に驚く外国人が多くなる。

 その基本性能の上に、空調と換気が必要になる。エアコンには換気機能はなく、基本的に室内の空気が循環しているだけだ。その空調は室内で目立つので誰もが認識しているだろうが、換気システムはどうだろうか。24時間換気システムは、2003年の建築基準法改正により、すべての住宅で設置が義務付けられるようになっている。この設備は2時間で部屋全体の空気が入れ替わるよう計画的な換気をしてくれる。しかし、その活用はピンキリとなっている。

 まず、設置は義務付けられているが、使われていないことがある。壁についた給排気口を閉じている家も多い。なぜなら、その付近が夏は暑く、冬は寒いからだ。これでは意味がない。また、この換気システムには種類がある。第三種換気は排気を強制的に機械で行い、給気は自然に任せるもので、これが一般的に採用されることが多い。理由は単に設備コストが安いからだ。

 しかし、これは先ほどの給排気口が外気の寒暖の影響を受けるので、居住者に嫌われて機能しなくなる。そこで、最良の選択は「第一種全熱交換型換気」になる。第一種とは、給気と排気のどちらも機械が計画的に行い、全熱交換型とは外気と室温の差を調整して給排気するのだ。

 また、この際温度だけでなく湿度も調整してくれる。これに加えて、空気をきれいにする機能もある。フィルターを用いて、花粉やPM2.5などの汚れを取り除くのだ。こうなると、空気の質は外より格段に良くなる。このため、こうした性能の家に住んでいる人は窓を開けたりはしない。換気と言うと、日本では小まめな窓開けと思う人が多いが、計画的な機械換気に勝可能性はゼロだからだ。