仕組みを味方につけよう

 たとえ金額が合致していても、売主が買い手を気に入らなければ取引は成立しないこともあります。これは不動産取引において特有の現象であり、通常の買い物では考慮する必要のない点です。

 わかりやすい例でいうと、とある5000万円の物件に興味があり、購入の申し込みをしたとしましょう。しかし、現金一括で購入したいという人があとから出てきた場合、売り手はローン落ちのリスクがないその買い手を選ぶ可能性が高く、その物件は手に入らないかもしれません。それゆえ、自分が購入する側として絶対的に優位であるわけではないのです。

 そのため、「買う側なのにどうして蔑ろにされるんだ」と、通常の買い物と同じように考えてしまう人は気をつけたほうがいいでしょう。

 物件情報についても同様です。昨今多くの不動産情報はインターネット含め公開されているものの、その情報を最初に手に入れるか、または優先的に案内してもらえるかは、仲介担当との関係性に左右されます。

 貴重な物件が1つしかないという前提で考えると、売主や仲介者も最も効率的に取引できる人に情報を提供したくなるのは自然なことです。もちろん、これについて私は情報をもっとオープンにすることでそういった不要な気疲れをなくしていきたいと考えている立場ですが、宅建業法の関係などによって今すぐ簡単には解決できないものでもあります。

 したがって、自分がどれだけ信頼性のある購入者であるか、または物件にとって良い購入条件を持っているかを売主や仲介営業マンに明確に伝えアピールすることが重要です。そうすることで、早期に情報を得たり、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。

 結論として、不動産取引では自分が絶対的な優位にあるわけではないという自覚を持つことが大切です。購入者と売主は基本的に対等な関係であり、その認識を持つことで、より良い取引が可能になるでしょう。私もこのルールに納得しているわけではありませんが、すぐに変えることができないのであれば、ルールを味方につけて考えたほうが皆さんの理想の家には近づけるでしょう。