GWが終わり、次の祝日まで約2か月も空いてしまうこの時期は、何かとストレスがたまりやすい。仕事に慣れなかったり、職場の人間関係がうまくいかなかったりして、「会社に行くのが憂鬱だなあ」と思っている人もいるかもしれない。しかし、悩みを一つひとつ解決していけば、意外にスッキリと心が晴れていくものだ。
そこで今回は、2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となり、「もっと早く読んでいればと後悔すらした」「ぶっ刺さりすぎて声出た」と反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんと、『「言葉にできる」は武器になる』の著者・梅田悟司さんに、目の前の人を「上手に褒める方法」について聞いてみた。(構成/根本隼)
相手が「頑張っていること」を見つけて、指摘する
Q. 人を褒めるのが苦手です。上手な褒め方は何かありますか?
安達裕哉(以下、安達) 人を褒めるうえで大事なのは、「相手に自慢させる」こと、つまり、相手が自慢できるネタを自分から投げかけることだと考えています。これは社内の人にも使えますし、特に外部の人に初めて会う際には、とても役立つテクニックです。
たとえば、クライアントの会社を訪問したときに、社員たちの快活なあいさつが印象に残ったとしましょう。そういう社風は、間違いなくトップマネジメントが意識的につくりあげたものです。
なので、社長や経営陣との会話冒頭で「御社の社員はあいさつが元気ですね」と言うだけで、相手は「あいさつに対するこだわり」を喜んで話してくれます。
自分の目で観察した「事実」を相手に投げかけると、「大事にしている価値観」や「重点的な取り組み」などを気持ちよく語ってくれる。これだけで実質的に褒めたことになるんです。
頭のいい人は「その場しのぎのお世辞」を絶対言わない
梅田悟司(以下、梅田) 無理におだてるのではなく、相手が重視している思想や行動を「すごいですね」と率直に言ってあげるのは、僕も非常に重要だと考えています。
社長のような組織のトップ層でさえ、人から褒められる場面は意外に少ないですし、「どうせ自分の頑張りなんて誰も見ていない」と思っている人もいるはずです。
だから、相手が努力していることを真正面から受け止めて、「これはすごいですね」と素直な感想を伝えてあげる。ものすごく効果的なひと言だと思います。
安達 歯の浮くようなお世辞を言っても、「心にもないことを言ってるな」というのは相手にすぐバレます。なので、頭のいい人ほど「その場しのぎのお追従」は口にしないですね。
承認欲求を満たす側に回る
安達 「事実を指摘して褒める」というのは、仕事にかぎらず、あらゆるシーンで使えます。
たとえば、パートナーが夜遅くまで服を選んでいたとします。そうしたら、その端的な事実を肯定的に捉えて、「頑張って服選んでてすごいね」と声をかけましょう。
要するに、パートナーは翌日のイベントに気合が入っているわけですが、それを認めてあげるだけで相手は喜んでくれるんです。
梅田 「あなたをちゃんと見てますよ」というメッセージをきちんと口に出して伝えることが大事だということですね。
安達 まさにその通りです。『頭のいい人が話す前に考えていること』では、「承認欲求をコントロールできる者が、コミュニケーションの強者になれる」と書きました。
SNSを見れば一目瞭然ですが、多くの人が周りから認められ、賞賛されたいという欲求に突き動かされて行動しています。これは、裏を返せば、自分の承認欲求を抑えて、他者の承認欲求を満たしてあげれば、信頼を勝ち取ることができるということでもあります。
良好な人間関係を築きたいときは、まずは相手が努力しているポイントを見つけて、それを褒めることからスタートしてみてはいかがでしょうか。
(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんの対談記事です)
Books&Apps運営、企業コンサルティング
Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。著書に、2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となった『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)など。