「毎日を気分良く過ごしたい」「他人に振り回されるのをやめたい」「自己肯定感を高めたい」……そんなあなたにおすすめしたいのが、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の感情コントロール術だ。簡単なことでは揺らがない自分になるための、「気分」を整える習慣を知ることができる。そんな本書からエッセンスをピックアップして紹介する本連載。今回のテーマは、「攻撃的な人の言葉をスルーするための思考法」だ。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部、文:川代紗生)

人生は「気分」が10割Photo: Adobe Stock

「高圧的な相手」を言い負かしたい!

「パワハラ上司は『人生の脇役』だと考える」

 力強いフレーズに、ページをめくる手が、思わず止まった。

 職場の人間関係に悩む人は少なくないだろう。高圧的な態度をとってくる相手に対し、受け流せばいいのか、言い返せばいいのか、それとも逃げるしかないのか。今あるストレスにどう対処するべきかわからず、途方に暮れている人もいるかもしれない。

 そんなあなたに知ってもらいたいのが、本書の「パワハラ上司は『人生の脇役』だと考える」という考え方だ。

 多くの人が悩むであろうパワハラ上司の扱い方について、このように書かれている。

まず、連中とは「基本的に会社でしか会わない」ということを再認識する。そして、イメージする。彼らには「脇役=通りすがりの変人」くらいの役を与えよう。今後、会社で変人から言いがかりをつけられるたびに、「へぇ~」「で?」と心の中で繰り返して受け流す。(P.138)

 なるほど、そう考えればよかったのか、と私が驚いたのは、私がそういった攻撃的な人との人間関係に悩んでいたときは、相手のことを「悪役」と認識していたかもしれない、と気がついたからだった。

 この人生の「主役」は私。そして、パワハラ上司は、私の人生に立ちはだかる宿敵であり、「悪役」。この人を倒さないことには、私は幸せにはなれない!

 そうやって一方的に、下克上的なストーリーを作り上げてしまっていたが、よくよく考えれば、舞台における「悪役」といえば、「主役」に並んで目立つ役どころである。「裏の主役」と言ってもいいかもしれない。カーテンコールでは最後に登場し、観客から拍手喝采を与えられる──言ってしまえば超おいしいポジションだ。

 さんざん私を傷つけてきたあいつに、そんないい役を与えてしまっていたのか!

「悪役」なんて目立つ舞台を与える必要はなかった。ぽっと出の「脇役」でよかったのだ。

「気分」をコントロールできれば、スルースキルも上がる

 本書にはさらに、こうも綴られている。

やつらのことを脇役のように思い込むことは、メンタルを守るのに実質的な効果があり、確実に役に立つ。考えてみれば自分の人生にとって別に貴重な人間でも何でもない。そんな脇役レベルのやつらを、大事な自分の人生にしょっちゅう登場させてやる理由なんかないから。(P.138)

 キム・ダスル氏の言葉の魅力は、「本来いるべきだった場所」に、自分が戻っていくような感覚にしてくれる点だ。

 たとえば、子どものころには素直に受け止められていた言葉も、大人になるにつれ、その裏を考えてしまうようになる。

「ああ言っていたけど、本心はどうかわからない」「本当は怒っていたけど、気を使って言えなかったんじゃないか」。「ありがとう」や「助かるよ」といったシンプルな言葉でさえ、疑ってしまうことがある。

 大人になればなるほど、人に裏切られたり、傷つけられたりする経験をすればするほど、たくさんの偏見が蓄積し、ものごとを素直に考えられなくなってしまう。

 そうやって、本来いたところからどんどんずれてしまった自分の視点を、元に戻してくれる。そんな力が、この本にはあると感じる。

「攻撃的な言葉」から心を守るためのとっておきの方法

 さらに、「『心を傷つける言葉』を『心をあたためる言葉』にする」というものもあった。

 こんな具合だ。

 ・「おまえはこの程度しかできないのか?」
  →「キミは十分に頑張っている」

 ・「おまえは知らなくていい話だから、首を突っ込まないで」
  →「話せるときが来たら、ゆっくり説明させて」

 ・「おまえに得意なことなんてあるのか?」
  →「成功だけがすごいんじゃない。キミが努力してきたこと自体がすごいんだ」

 傷つけるような言葉を、心をあたためる言葉に言い換える、というものだ。

 それこそ、上司のような、自分より明らかに力のある人から、きつい言葉をかけられたら、「自分はダメな人間なんだ」と思い込んでしまっても無理はないだろう。

 けれどそういうときこそ、自分の心を守るために、別の言葉に言い換えてから受け止める。ポジティブなフィルターを通してきちんと濾過してから、心の中に沈殿させるのだ。

 自分に自信がないときや、がんばりすぎて疲弊しているときは、攻撃的な人に対抗する元気もないだろう。

 そんなときは、キム氏の言葉をメモして、手帳にはさんでおいたり、スマホに記録しておいたり、すぐに見られるようにしておくのもおすすめだ。

「言葉って想像以上に強力で、甘く見たら大ケガをする」。

 本書には、そんな言葉も書かれていた。きつい言葉で攻めてくる相手には、自分の「気分」を守る言葉で、バリケードを作らなくてはならない。あなたを否定する言葉を、自分の心に侵入させてはならないのだ。

 ストレスフルな環境で、心身ともに疲弊しているときこそ、キム氏の言葉に触れてみてほしい。自分の「気分」を自分で守る方法が、何かしら見つかるはずだ。