ジャパンディスプレイ10年連続で最終赤字
東芝はリストラしても成長性に疑問符

 日本企業にとって、産業構造の変化への対応が一大課題となっている。1990年代以降、ビジネスのグローバル化は加速した。米企業は高付加価値型のソフトウエア開発に集中し、製品の生産を中国や台湾の企業が受託して国際分業体制が構築された。

 一方、中国政府は幅広い分野で産業補助金政策を強化した。特にEV、車載用バッテリー、太陽光パネルなどの分野で、米欧が対中関税を引き上げなければならないほど、中国企業の価格競争力は高くなっている。

 そうした中、シャープは研究開発から生産、販売管理まで一貫した総合戦略を構築するのに頓挫した。結果的に、韓国、台湾、中国勢との競争力は拡大し、同社の大型液晶パネル生産は停止に追い込まれた。

 今後、AI分野の成長は加速する。先端分野を中心に米中対立が先鋭化するリスクは高い。産業構造の変化はよりダイナミックに進むはずだ。変化に対応できない企業の生き残りは一段と難しくなる。

 変化への対応が遅れる経営に致命的だ。例えば、東芝、ソニー、日立製作所の液晶パネル事業を統合した、ジャパンディスプレイ(JDI)の収益力の低下が深刻である。24年3月期まで10年連続で連結最終損益は赤字だった。

 JDIにパネル事業を移管した東芝は、米ウエスチングハウス買収や不適切会計問題で、自力経営に行き詰まった。東芝は27年3期までに国内従業員を最大4000人、削減する計画という。業績悪化をリストラで何とか食い止めようとしているものの、今のところ新たな収益の柱が見当たらない。

 企業は、どのように成長を実現し、収益を持続的に増やせるか、これまで以上に具体的なビジョンを持つことに迫られている。成長性の高い分野へのアクセスを保ち、迅速に経営資源を再配分することができるか、常に検討することが求められている。収益源の多角化、財務・事業両面でのリスク分散が、企業の長期存続を支える。シャープ堺工場の液晶パネル生産停止は、他社にとっても決して他人事ではないはずだ。

AI向けデータセンターをつくる!で株価下落…投資家が見抜いた「シャープの根本的な病」2015年6月9日、東京で行われたシャープ「AQUOS/4K」記者発表会に出席した歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん Photo:Sports Nippon/gettyimages