「打者に専念させておくのは問題」
米国のプレー報道は秀逸

 いや、日々のプレーに関する記事でも、米国の報道は秀逸でした。5月7日、米データ会社のコーディファイが、大谷のアーチ動画をX(旧ツイッター)に添付し、「大谷翔平を打者に専念させておくのは問題だ」と、『目に余る』活躍ぶりを伝えました。なにしろ、これで本塁打のみならず、54安打、打率.370、長打率.705、OPS1.139はいずれもメジャー全体でトップ。31得点と出塁率.434も、同僚ベッツに次ぐ同2位です。凄い打撃成績ももちろんですが、これに「ケガをしているのに投手に戻れ」と自嘲するユーモアが読者を愉しませています。

 去年退任したアストロズのダスティ・ベイカー監督(74)も、妻のメリッサさんが大谷ファンであることをたびたびジョークにしています。昨年のオールスターではア・リーグチームを指揮する監督として参加し、試合前日の会見で大谷のことをこんな風に語りました。ライバルチームの監督なのに、大谷評は「私が見た中で最も驚異的なアスリート」。

 現役時代はハンク・アーロン、レジー・ジャクソンといった偉大な選手とともにプレーし、指導者となってからもバリー・ボンズ、オーレル・ハーシュハイザー、ケン・グリフィーら多くの名選手を指揮してきた指揮官が、大谷を最高と評価するのは大変なことです。

 そして、最後にぼやきが入ります。「エンゼルスとは同リーグ同地区なのでシーズン中に何度も当たるし、オオタニとは投打両方でよく対戦しなければならない」。そして「ときどき、少しツラくなるときもある。オオタニは試合前に私にお辞儀をしようとするんだよ。私はうつむいて、彼を見ないようにする。だって彼はお辞儀をしてからホームランを打ってしまうんだから。そのときスタンドにいる妻を振り返って見たら、ちょうど彼の写真を撮っていたんだよ」――。

 監督は74歳、奥様に嫉妬するという年齢でもないので純粋なジョークですが、いかにも米国らしくて微笑ましいものです。

 もちろん、大谷に関わる日本の記者はスポーツ紙だけではなく、日刊紙、夕刊紙、テレビも含まれています。しかし、今や衰退する一方のスポーツ紙記者は、今こそ大谷報道で野球のプロとしての記事を出してこそ、凋落するばかりの部数の歯止めとなるはずです。テレビや新聞では知ることができない大谷像、いやMLBで活躍する日本人選手と活躍できない、渡米さえできない日本選手との差をわかりやすく報道して、スポーツ紙の存在価値を知らしめる大チャンスではないでしょうか。