役割や肩書を取り払い、個人の生き方を追求する

 考えてみれば、こうした「中年の危機」は、次のステージへ進む前に、ほんの少し立ち止まり、自分の生き方を再点検する絶好の機会ではないでしょうか。

「今まで担ってきた役割や肩書をすべて取り払ったら、私は一体何者なのか?」と自ら問いかけながら、個人の生き方を追求し、本当の自分に出会えるチャンスを得るのです。

 そうしたせっかくのチャンスであるにもかかわらず、たいていの人は加齢で失うものばかりに目を向けがちです。老いや死という現実を肌で感じるからか、時間という現実をも否定し、押し寄せる歳月になんとしてでも抗おうとするのです。

 加齢によって失うものがある。これを受け入れていくのは切ないものです。

 しかし、失うものを食い止めようとしがみついていたって、時は流れていくのです。だったら、限りある時間を有意義に使いましょう。42歳でパーキンソン病と診断され、65歳を過ぎた今、改めてそう思います。どうか、次のステージに向かうチャンスのほうに目を向けてみてください。

(本原稿は『もし私が人生をやり直せたら』から一部抜粋、追加編集したものです)