考えるビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

「がんばっているのになんで売れないんだろう……」こんな悩みを抱えている人は少なくありません。本稿では、売れない理由と、陥りがちな「5つの勘違い」について紹介します。

※本稿は、河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

足のあるおばけは怖くない

 以前、明治時代から続いている有名な老舗(しにせ)旅館に伺ったときのこと。

 夜、一人で露天風呂に入っていると、大きな木の向こう側から、話し声が聞こえました。でも、そっちはお風呂も洗い場などもなくて、誰もいないはず。僕は、とうとうおばけが出たのかなと思って、ビクビクしていました。

 でも、せっかくいい気持ちで温泉に入っているのに、それを邪魔されるのも嫌だなと思って、おそるおそる話し声がするほうを見に行ってみました。

 すると、そこには誰もいなくて、掃除用の蛇口から水滴が落ちているだけでした。その音が反響して話し声のように聞こえていたんですね。

 正体が分かれば怖くありません。蛇口を閉めるという対策をすればいいだけです。人生や仕事に起こるいろいろな問題も同じです。

 原因が分からないとビクビクと恐れることになりますが、その原因が分かれば対策を考えればいいだけです。

 では、「売れない原因」について考えてみましょう。

売ろうとするから、売れない?

 僕が経験してきた「売れない原因」をお伝えする前に、あなたに質問があります。

――Q.「売れるとき」と「売れないとき」、何が違うと思いますか?

 昔の僕は本当に売るのが下手でした。それが今は、上手に売れるようになりました。昔の僕と今の僕、何が違うと思いますか?

「売れるとき」と「売れないとき」、そこには大きな違いがあります。売れないときの僕は、いきなり売ろうとしていたのです。いきなり「これいいですよ!」と始める。だから売れませんでした。

 売上を上げたいし、たくさん買ってほしい。でも、そう思って、売ろうとすればするほど、売れないのです。なぜかと言うと、買う人がその気になっていないからなのです。

「欲しい!」という気持ちになっていないのに、「この商品、すごくいいんですよ!」「この色が素晴らしくて!」「この肌触りが最高で!」などと、一生懸命に説明したり、説得したりしても、そもそも相手は興味がないわけですから、売れないのです。

 重要なのは、まだ買いたいと思っていない人をその気にさせること。対話をして、「欲しい!」という気持ちを引き出すことです。

 相手との対話ができれば、説得しなくても、売り込まなくても、トーク力がなくても、追いかけなくても、相手から「欲しい!」と言ってもらえるのです。