JR東日本と関東私鉄7社が
発表した衝撃の方針

 前述のように、QRコード乗車券自体は既に実用化しており、技術的なハードルは高くない。日本での導入が進まない理由は、複雑なネットワークを構成する都市鉄道では、一社単独で磁気乗車券を廃止しても効果が薄いからだ。

 次の段階に進むにはまだ時間がかかるのか…、そう思っていたところに飛び込んできたのが、東武鉄道が4月30日に発表した「東武グループ中期経営計画2024~2027」に記された「QR乗車券の導入による磁気乗車券の全廃」方針だ。

 具体的な進め方に注目が集まる中、さらなる衝撃が訪れる。日本最大の鉄道事業者JR東日本と東武を含む関東私鉄7社は5月29日、QRコード乗車券を2026年度末以降導入し、磁気式の「普通乗車券(近距離券)」を廃止すると発表したのである。「次の一歩」どころか、山が動いてしまった。

 素地がなかったわけではない。JR東日本は2022年11月、2024年度下期以降、東北エリアから順次「QRコードを使用した新たな乗車サービス」を導入すると発表しており、首都圏でも自動改札機の更新にあわせてQRリーダーを設置している。

 これはオンライン予約サイト「えきねっと」で乗車券・特急券を購入時に「QR乗車」を選択すると、スマホに表示したQRコードで改札機を通過できるチケットレスサービスだが、QRコードリーダーを備えた改札機を用意するのであれば、それだけにとどまらないのは当然の話。QRコード乗車券の導入を目指す私鉄各社を巻き込んで、磁気乗車券の最後のとりでを一気に崩しにかかった。