そんな許されざる行為が日本の宗教施設で起きた。本来ならばマスコミはこの蛮行を国内外に広く発信し、個人の犯罪とはいえ、中国政府に「遺憾」くらい言わせなくてはいけない。

 が、現実のマスコミは「落書き事件」ばかりを報じて、「放尿」の事実には目をつぶって鎮火しようとしているようにさえ見える。これはさすがに「自主規制」を通り越して、「偏向報道」と言わざるを得ない。

 という話を聞くと、ネットやSNS界隈の皆さんは「親中マスゴミのもとに中南海(中国共産党中央幹部)から報道統制のお達しが出たのだ」というストーリーが頭に浮かぶだろう。

警視庁や外務省の顔色をうかがう
セコすぎるサラリーマン意識

 しかし、実際にマスコミで働いていた経験から言わせていただくと、現実はそういうダイナミックな話ではなく、もっとセコい。今回、マスコミが「落書き事件」を連呼しているのは、会見やレクで世話になっている警視庁や外務省にトンマナを合わせているだけなのだ。

 日本のマスコミ記者たちは新人時代から、警察や役人への「裏取り取材」を叩き込まれるのだが、そこで彼らが使う用語・呼称も忠実に真似ることも徹底させられる。なぜかと言うと、「役所や警察の言う通りのニュースを流しておけばクレームも入らないし、もし誤報でも役所や警察のせいにできる」からだ。要するに、報道機関としての信頼を守るための「企業防衛」の一環だ。