彼の行いは愛国どころか、中国に泥を塗ったようなもの

 話がちょっと脱線したが、「鉄頭」は、今回行ったことの理由として、福島第一原発の処理水放出への抗議のためだと主張していた。かつて中国の国営テレビ放送局であるCCTV(中央電視台)の有名な記者であり、現在日本在住の王志安氏(https://diamond.jp/articles/-/310835)は、「それならば、東電や政府官邸に抗議へ行くべきだ。靖国神社を選んだのは、日中両国にとってセンシティブな場所であるため、注目度が一気に上がるからだ」と指摘している。

 今回のこのあまりにも下品な行為は、さすがに中国政府にも顰蹙(ひんしゅく)を買ったようだ。中国政府の報道官は「靖国神社は日本軍国主義が発動した対外侵略戦争の精神的道具とシンボルだ」とする一方、「外国にいる中国国民が現地の法律や法規を遵守し、理性的に要求を表現するよう改めて注意する」と、不適切な行動を控えるよう呼びかけた。重要なのは、後半部分の見解だ。

 中国国内でも、元中国共産党機関紙・人民日報系『環球時報』の編集長で、中国版Twitterである「Weibo」に2500万人のフォロワーを有する胡錫進氏は、「この種の売名行為は、私たちの主流社会が推進する愛国心とは何の関係もないと言わざるを得ない」と一蹴した。

 また別の著名な時事評論家は、「今回のこの騒動は、愛国どころか、我が国に泥を塗ったようなものだ。今後、愛国者を自称するインフルエンサーたちがマネをして、模倣犯が出てくる可能性があるし、外交問題にも発展しかねない。両国に害を与えることを危惧する」と警鐘を鳴らした。さらに「『鉄頭』は悪い手本を示した」と懸念を表明したのである。

 なお、多くの在日中国人が、今回の件に対して腹立たしく思っている。「我々にとっては大きな迷惑だ。周りの日本人から変な目で見られかねないし、板挟みになる」「本当にやめてほしい」といった具合だ。こうした犯罪行為を真似する人が今後現れないことを、心から祈る。