「鉄頭」は非常に計算高い人物

 実は中国社会において、「鉄頭」の行為は、一部のネットユーザーから「英雄だ」「よくやった!」と称賛されているものの、どちらかというと、批判の声の方が多く上がっている。例えば、こんな意見だ。

「まったく卑怯な男だ!どうせやるなら、夜ではなく、堂々と白昼でやれば男らしいが、結局小心者なのだ」

「愛国行為もクソもない、単なる目立ちたがり。これまでの悪評判を挽回したいだけだ」

 彼の本当の狙いは、“日本批判”を道具にして、「愛国」という名目で注目を浴び、閉鎖されたアカウントを復活させたかったのだろうという見方がほとんどだったのだ。

 中国では長年にわたり愛国(反日)教育を行っている上、昨年の福島第一原発処理水の海洋放出問題以来、日本は常に非難の的となっている。日本を批判することは、一番安全で、低コストで、知名度を高めやすく、SNSのフォロワー数を増やすためにもっとも効果的で便利なツールなのだ。しかもだんだんとエスカレートしてきて、ネットでは「愛国ビジネス」「反日はファッション」という言葉が出回っているほどである。「反日活動」の競争が激しくなるにつれ、手段や中身が段々と低俗になってきた(https://diamond.jp/articles/-/344326)。今回の靖国神社での騒動は、まさにこうした動きを象徴する事例といえる。

「鉄頭」本人は、よく分かった上で行動している。つまり、たとえ日本で捕まっても、日本は民主国家であるため、法に基づいて対応され、厳罰を受けることはない。まずは靖国神社が被害届を出し、警察に受理されたら、「器物損壊」あたりの罪に問われるだろう。拘留や罰金などがあっても、別に大したことはない。その代わり、彼は国に戻ったら、注目を浴びることは間違いない。英雄のように扱われるかもしれない。うまくいけば、SNSのアカウントが復活し、EC販売などのビジネスを再開できる可能性も期待できる~こうした考えを見透かされ、中国のSNSでは「彼は非常に計算高い」と見る人たちがたくさんいたのである。