中央省庁の改革に
必要な「仕組み」とは何か

 では、どうしたらいいか。

 この問題は、実は極めて単純な経営学の問題である。

 風土や文化の問題ではない。人材の能力の問題でもないし、わが国の性根が腐っているとかそういう話でもない。

「組織の中に、変えていくための仕組みが入っているかどうか」というだけの話だ。

 近年、組織のあり方を批判される組織に共通項を見いだすとすれば、いずれも自らをドラスティックに変えていく仕組みを内部に有していないことである。

 先述した問題はもちろん中央省庁も把握している。なのに変われない、変わるスピードが遅いというのは、「変革するための仕組み」に問題があると考えるのが妥当だろう。

 では、どんな仕組みが求められるのか。

 例えば、1980年代には変革の基本モデルとして、ロバート・バーゲルマンによる「戦略変更モデル」が提唱されている。バーゲルマンは、米インテルがどのように戦略を転換したのかを分析した。

 バーゲルマンによれば、「ボトムアップとトップダウンの2種類の改革メカニズムを社内に導入しておくこと」が重要だという。

 ボトムアップ側では、現場での自律的な行動変容のトライアンドエラーが許容されることが大切となる。それが大きな変革の文脈(戦略文脈)を生み出していくことで、組織全体の改革へと結実していく。組織の根本的な考え方(戦略コンセプト)の転換につながる。

 一方、トップダウン側では、トップから「こういうふうに変わっていこう」とする命令や発言が行われ、それに沿って組織のルールが変革される(構造文脈)ことで、現場の変異が促されていく。

戦略変更モデル図:筆者作成
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 この2つのライン(ボトムアップ型とトップダウン型)が相互作用を生み出す中で、組織はとどまることなく変化を続けていくことができるようになる。