年々少なくなる
大規模開発の余地

 JR東日本はこれまで、運輸事業、生活サービス事業(流通・サービス事業、不動産・ホテル事業)、IT・Suica事業を「3つの柱」としてきたが、2022年から生活サービス事業とIT・Suica事業を統合して「生活ソリューション事業」に再定義し、「モビリティ」とふたつの軸という言い方をするようになった。

 流通・サービス事業は、コンビニNewDaysや、ecuteなどの駅構内店舗、acureブランドで展開する自動販売機ビジネスなど、駅のスペースを活用する小売業が中心だ。これに対して不動産・ホテル事業はルミネ、アトレなどの駅ビル事業、渋谷スクランブルスクエアやグラントウキョウなどの複合ビル開発、ホテルメトロポリタンなどのホテル事業といった、直営施設経営や賃料収入を中心としたビジネスだ。

 JR東日本は近年、東京駅八重洲口、神田万世橋、新宿、渋谷、横浜などで高層ビル整備や、高輪、竹芝、大井町など東京南エリアのまちづくりを進めてきたが、今後10年も品川駅西口の大規模再開発、渋谷駅再開発の総仕上げ、新宿駅グランドターミナル構想など山手線を中心とした東京圏のネットワーク結節点への戦略的投資を進める計画だ。

 これ以外にも中野駅や松戸駅など拠点駅、地方主要駅でも大規模開発が進んでいるが、その余地は年々、少なくなっている。JR東日本は固定資産として2兆円以上の土地を所有しているが、そのほとんどが国鉄から継承した鉄道事業用地だ。汐留貨物駅跡地などの遊休地は国鉄清算事業団を通じて処分されたため、JRの開発は既存施設の建て替えや再編で生み出したスペースを中心に進めざるを得なかった。