半導体に続く“重要物資”となった車載バッテリー業界。電池メーカーだけではなく部素材や製造装置の分野でも日本企業がプレゼンスを発揮している。ところが、EV市場の伸び悩みや地政学リスクにより、電池サプライチェーン全体に動揺が広がっている。特集『EV失速でどうなる?電池覇権』の#4では、200社を超える電池関連企業を束ねる電池サプライチェーン協議会(BASC)の森島龍太業務執行理事(トヨタ自動車出身)に、日本の電池業界“復権”の課題を語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
BASCは200社を超える大組織に成長
EV失速にどう対処する?
――電池サプライチェーン協議会(BASC)の会員数は増加を続け、今年200社を超えました。改めてBASCの役割について教えてください。
当初は5~6社ぐらいで立ち上げようかなと思っていました。2020年に菅義偉首相(当時)が50年のカーボンニュートラル達成を宣言してからは続々と参加企業が集まり、21年4月の設立時点では55社でした。その後も毎月のように会員企業が増え、今年6月時点で211社にまでなりました。今では日本の電池産業に属する企業のほぼ全てが加入しています。
日本勢は、電池そのものの製造だけでなく、正極、負極、セパレータ、電解液の4素材も非常に優れています。それに加えて、装置メーカーや部素材メーカーも高い技術を持っています。これらの企業が「技術で勝ってビジネスで負ける」ようなことがあってはいけません。
日本の電池関連企業が安定的なビジネスをできるよう、環境を整備していくのがわれわれの役目です。BASC自体は事業を行いません。国に電池産業の課題を伝え、障害となる規制の改正や支援をお願いしています。これまでのところ、国には非常に親身になって聞いてもらっています。
――足元では世界的に電気自動車(EV)の需要が失速しています。地政学リスクも高まっており、BASCの会員企業の中には、困難に直面するところも多いのではないでしょうか。
次ページでは、BASC立ち上げメンバーの一人である森島業務執行理事が、EVの伸び悩みや米中デカップリング(経済分断)の中で日本勢が復権するために克服すべき課題を明らかにする。日本の電池産業が「ビジネスで負けない」ためにはどうすればよいのだろうか。