僕も、もしそういう画一的なキャリアアップだけを考えるなら、DeNAにずっと勤めていたほうがよかったでしょう。DeNAでは営業から始まって、その後は営業責任者、新規事業担当、人事担当を務め、最後は部長でした。

 一部上場企業(当時)の部長職ですから、もう少し勤めていれば子会社の社長や、本社の執行役員にはなれたかもしれません。プロ野球球団を所有している会社の役員ですから、そのほうが世間的な「キャリアアップ」には適っていたでしょう。

 けれども、会社員という立場は、次第に僕にとっては窮屈なものになっていましたし、もう少し自由に幅のある働き方をしたいと思いました。自分の特性から考えても、会社員として働くのは合わない気がしたのです。

 その後、独立し、フルリモートワークで会社を運営する株式会社キャスターの取締役に就任。現在は、同社が設立した働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Labの所長を務めています。

 2024年2月からはSTEM(理系)分野のジェンダーギャップ解消を目的として活動する山田進太郎D&I財団という公益財団法人のCOOを務めています。

 アップしたのかダウンしたのか分かりませんが、自分の強みやそれが活きる場所を探してきた結果だと思います。

分かりやすさに流されず、具体的に考えていく

 漠然とキャリアはアップするものと信じてしまう背景には、皆、キャリアに対するモヤモヤとした不安があるからなのだろうと思います。しかし、そのモヤモヤとした不安も、基本的にはキャリアについてきちんと調べたり、考えたりしていないからなのではないでしょうか。

 強みと場所という視点で分解してキャリアを考えてみたり、強みをさらに分解してスキル・能力・特性から考えてみたりすることで初めて、どんな構造があるのかを理解することができるわけですが、独力でそれを行うことはなかなか難しいものです。

 内実がよく分からないため、全体として「キャリアアップ」とざっくりとした塊でつかみ取ってくれるような言葉を、信じざるを得ない状況に置かれているのかもしれません。