些細なことでイライラしたり、空気が読めずにトンデモ発言をしたり、武勇伝を何度も繰り返したり。そうした言動で周囲に迷惑を掛ける中高年層は、たとえ過去に仕事で成功していても、若者たちから「老害」だと認定されてしまいます。ですが、もちろん本人たちは悪気があって老害っぽい言動をしているわけではありません。では、なぜ「やらかす」のでしょうか。医学博士・平松類氏の著書『「老害の人」にならないコツ』(アスコム)から抜粋して、その答えをお届けします。今回のテーマは「若者に嫌われるアドバイス」について。
親切心があふれすぎて自分が見えなくなっている「老害」
私は高齢者に関する情報を得るために、チャンスがあれば性別や年代を問わず、いろいろな人から話を聞くようにしているのですが、先日は、とあるご縁で知り合った20代男性のNさんから、次のようなエピソードを聞かされました。
Nさんは1カ月ほど前から、家の近くにあるジムに通い始めました。
ジム初心者ながら、事前にネットでトレーニングの基礎知識を学び、別のジムでインストラクターをやっている大学時代の友人からアドバイスをもらい、万全の態勢を整えていました。
数回利用して、自分のペースをつかめてきたし、少しずつトレーニングの効果を実感できるようにもなったそうです。そんなある日のこと。常連さんたちからOさんと呼ばれている高齢男性が、Nさんに話しかけてきました。
「違う違う。そのマシンは20回2セットよりも、10回3セットのほうが効果的なんだよ。ほら、やってみな。お兄ちゃん、初心者だよな?」
そのほかにも、使用するマシンの理想的な順番や、自分に合ったベストの負荷(重り)の探し方など、次から次へと助言をしてきたといいます。Nさんからは、何も尋ねていないのに。
Oさんは満面の笑みを浮かべ、「わからないことがあれば、なんでも俺に聞きな」と“ダメ押し”をしてきました。
「Oさんのアドバイスが的確かつ、僕自身も納得のいくものであれば問題なかったのですが、どれもこれもピントがズレている印象で、現役インストラクターの友人の話と違う点も多々ありました」
これがNさんの正直な心境です。だからといって、状況的に無視をするわけにはいきませんし、「それは間違っています」とシビアに反論することもできません。
Nさんは「あ、ありがとうございます」と答えるしかなく、Oさんの視界のなかにいるときは、言われたとおりにトレーニングしている“ふり”をするしかありませんでした。
ペースが乱されてしまい、トレーニングには身が入りません。はっきりいって、うっとうしかったそうです。