オロナミンCが国民的ドリンクになれた理由
リポビタミンDにはない「強み」とは?

 実は非公式な栄養ドリンクの歴史にはもうひとつ面白い先行事例があります。

 オロナミンCは「医薬品ないしは医薬部外品が栄養ドリンク」という定義に当てはまらない製品だということをご存じでしょうか?

 大塚製薬のヒット商品であるオロナミンCも日本の栄養ドリンク市場を拡げようという野望から生まれた商品です。当時大塚製薬ではキングシローなどの栄養ドリンクを発売していたのですが、苦戦を強いられていました。

 当時の開発陣が苦心をした結果、編み出したのがそれまで市場になかった「おいしいドリンク剤を開発する」というアイデアでした。1965年のことです。炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。

 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。

 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。だからオロナミンCは清涼飲料水なのです。

 当時のこの経営判断はもうひとつ別の未来を拓きます。医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。

 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました。

 大村崑さんのCMと「元気ハツラツ」という効能をうたえないキャッチフレーズが日本中に浸透して、国民的に飲まれるようになったのです。

 さて、ここまでの公式および非公式な歴史解説からみなさんはこの市場についてどうお感じになるでしょう。

 リポビタンDが日本国内で圧倒的な地位を占める一方で、世界市場はレッドブルにとられてしまった。そして、そのやり方が有効なことは実はオロナミンCが日本国内で過去に証明していた。

 そう考えると栄養ドリンク市場の縮小と、エナジードリンク市場の拡大については、ある種、感慨深いものがあります。