「カフェイン強化+高齢者向け」の
飲料市場が広がるかもしれない
さて、この記事の最後にもうひとつ、あるアイデアについてお話をしたいと思います。
私はレッドブルの成功は極めてマーケティング的な成功だったと考えています。元気が出る飲料を手軽な缶入りにしてコーラと同じ場所で売り始めたら世界でバカ売れしたわけです。
それに気づかなかった反省から考えると、リポビタンDにもオロナミンCにもリゲインにも、これまでの主要市場とはまた別の、年々拡大する市場機会があるように感じます。
実は、私の家族で圧倒的に栄養ドリンクを消費していたのは私の父でした。20年近く前の話です。
当時、70代に入った頃から、父はとにかく元気が出ないという症状に悩んでいました。私も最近、同じ悩みを持っていますが、人生の中で初めて高齢者になるという経験をすると、それまでできたことができなくなることが増えてきます。元気でいるというのもそのできなくなることのひとつです。
それで父の家に遊びにいったときに「リポビタンDを買ってきてほしい」と言われたのです。親孝行としては安上がりだったので、行きに薬局でひと箱買って持っていったらずいぶんと喜ばれました。
家が近所なので訪ねるたびに買っていくようになり、年齢が上がるたびにリポビタンDではなく、タウリンが3000mgのものや、晩年はタウリン4000mgのものを喜ぶようになってきました。
そういう私も、当時の父よりはまだずいぶんと若いはずですが、何をしていても疲れが早く来るようになりました。それで当然ですがいろいろなものを試しています。
ビタミンのサプリメントは日常的に飲んでますし、骨や筋肉量を落さないようにカルシウムやプロテインも口にしています。そしてこれはあくまで個人の感想ですが、仕事中にしゃきっとするにはエナジードリンクが即効性がいいようです。たぶんカフェインのおかげでしょう。
その観点で振り返ると、少なくとも日本市場での現在のマーケティングにおいては栄養ドリンクもエナジードリンクも筋肉がマッチョな若者向けのイメージばかり目につきます。
私は経済の専門家なのでそういったマーケティング情報は無視してエナジードリンクや栄養ドリンクで疲れやすい日常をカバーしていますが、私の同世代から見れば今の栄養ドリンクのマーケティングは逆に情報バイアスになってしまっているのではないでしょうか。
マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。
カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。
リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。
しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?