エナジードリンクは「清涼飲料水」だが
問題点もある

 栄養ドリンクとは少し違う話になるかもしれませんが、歴史という観点ではサプリメントについても触れておいたほうがいいかもしれません。

 今の若い方はご存じないでしょうけれども、1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。

 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。

 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します。

 アメリカでシェアが高かったネイチャーメイドのサプリメントの日本での販売権を大塚製薬が獲得したのですが、当時、アメリカから輸入したものをそのまま売っただけで日本市場では圧倒的に価格が安くなると大塚製薬の役員の方がおっしゃっていたのを思い出しました。

 ビタミン剤が食品になったぐらいですから、その頃に、栄養ドリンクの分類も見直しておいたら、今頃、世界の栄養ドリンク市場の業界地図も変わっていたかもしれません。

 さて、ここまでの説明ですと一方的にエナジードリンク市場拡大を礼賛しているようにも読めるので、バランスの意味でエナジードリンクの問題点も挙げておきます。

 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。

 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです。

 カフェインはたばこやアルコールと並んで適法な嗜好物・刺激物のひとつですが、取り過ぎが体に悪影響を及ぼすのはたばこやアルコールと同じです。

 カフェインの場合、適量ならば意識がしゃっきりして、仕事がはかどります。朝、コーヒーを飲むと目がよく覚めるのと同じです。

 しかし過剰に摂り過ぎるとカフェイン依存症のリスクが高まります。重症になると海外では死亡例も出るくらい注意が必要です。

 一般にエナジードリンク1本にはコーヒー2杯分程度のカフェインが入っています。中毒を起こすにはエナジードリンクを1日7本ぐらい飲むレベルだといいますから、普通の飲み方ならば問題ないはずです。

 ただ、たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませんね。