認証不正防止と認証プロセスの
DXは分けて考える
では、認証不正に対して今後、国は再発防止をどう考えているのか。
この点について、国土交通省は4月から「自動車の型式指定に係る不正行為の防止に向けた検討会」を実施している。
これまで自動車メーカーなどへの調査やヒアリングが行われているが、5月に開催した第2回検討会では委員から、企業のガバナンスに対する意識の徹底や、認証不正に対するペナルティーの検討などさまざまな意見が出ている。
久保田局次長によれば、同検討会は夏の後半までには取りまとめをして、秋口には報告書を公表する目標だという。
一方、認証プロセスについては、デジタルトランスフォーメーション(DX)を含めた改善策を、今年度中の取りまとめを目指して検討中だという。
複数の認証試験で提出する書類などをDXで統合するなど、作業の効率化を図る。
併せて、社内データの取り扱いについてもDXによる改善が考えられる。どういうことかというと、認証における各種試験は審査官が立ち会うことが基本だが、国際基準の43項目においてもそれぞれ多様な試験があるため、状況に応じて自動車メーカーが個別に実施した試験の社内データを認証申請に採用する場合がある。つまり、いわゆる性善説に立ち、国が自動車メーカーを信頼することで成立している考え方だ。
だが、一連の認証不正では、こうした性善説を逆手に取った虚偽記載が行われていた。記載ミスや記載漏れならばDXにより改善の余地はあるが、故意による不正は単純なDXでは防止できないと、国土交通省では捉えている。
よって、認証プロセスのDXについては、業務の効率化と、認証不正の防止という2つの面を分けて考えるべきという姿勢である。
いずれにしても、国際社会における日本の信用を伴う自動車の認証については、自動車メーカー個社の企業努力のみならず、国が法令順守の徹底に対する仕組み作りを急ぐべき状況にあることは間違いない。