世界のビジネスエリートの間では、いくら稼いでいる、どんな贅沢品を持っている、よりも尊敬されるのが「美食」の教養である。単に、高級な店に行けばいいわけではない。料理の背後にある歴史や国の文化、食材の知識、一流シェフを知っていることが最強のビジネスツールになる。そこで本連載では、『美食の教養』の著者であり、イェール大を卒業後、世界127カ国・地域を食べ歩く浜田岳文氏に、食の世界が広がるエピソードを教えてもらう。

【料理人は見ている】いい客なら絶対しないNG行動・ワースト3Photo: Adobe Stock

ありえない「ノーショー」

 大人数で予約が入っていたのに当日来ず、大損害を受けた、といった話がたまにソーシャルメディアで話題になります。

 まずは、予約したのに連絡することなく来店しないノーショー。これは意図的である場合、論外です。

 ただ稀に、予約日や時間を間違えていた、ということはあるかもしれません。これは、お店側が間違えていたケースと、お客さん側が間違えていたケース、両方ありえます。

 お店側が数日前に予約に日時を確認することが最近は増えていますし、オンライン予約であればこういう行き違いは起きづらくなります。

なくならないドタキャン問題

 続いて、ドタキャンする客。

 あくまで一例ですが、一昔前は製薬会社のMRが医者の接待のために複数のお店を同じ日に予約して、医者にその日の気分で選んでもらい、あとのお店をキャンセルする、といったことが普通に行われていました。これも、問題外です。

 ただ、どうしようもない状況も起きえます。コロナやインフルエンザになってしまった、となると、無理をしてお店に行くほうが迷惑です。その場合はお店に相談しつつ、できるだけ代理を立てたいところです。

 海外の高級店の場合、オンライン予約が主流でクレジットカード情報を登録するケースが多いので、キャンセルポリシーに抵触する場合はキャンセル料をチャージされることになります。

 日本でもインバウンドの増加とともに海外と同様のキャンセルポリシーの設定が広まりつつありますが、電話や相対で予約を受けている場合は厳格なキャンセルポリシーの適用は難しいかもしれません。

 僕は、そんな場合でも、代金は払う、と申し出ることが大事だと思っています。なぜなら、たとえば前日や当日のキャンセルだと、お店はすでに食材を仕入れ、料理を仕込んでいる。そして、その席を他のお客さんで埋められない可能性があるからです。

平気で遅刻する客、容認する店

 そして、時間を守らない客。日本以外のほとんどの国では、遅れるのが普通で、時間通りに来る客のほうが少ない、というのが現状です。道路が常に渋滞していたり、公共交通機関が発達していなかったりするからです。

 ただ、日本では、遅れる、遅れそうというのであれば、必ず同行者なり、お店に連絡するべきです。中でも、一斉スタートのお店は、先にスタートしてもらう。

 お店側も、遅れる人がいるからと全員揃うまでスタートしないというのはやめてほしいと思います。貸切なら別ですが、全く知らないグループの、全く知らない人の遅刻のために、残りの全員が待たされてスタートが遅れたりするのは、理不尽だと思います。

 難しいのが、たとえば日本で18時のオープンと同時に予約している場合、何時に到着すべきか。18時ちょうどにならないと中に入れてくれず、雨が降っていても外で待たなければならない店もあります。

 逆に一斉スタートの店だと、1分遅れただけで電話がかかってくることもあります。このあたりはお店によって全く考え方が違うので、SNSや予約サイト、予約時の電話で説明してほしいところです。

 一方、海外では、オープンと同時に伺ってもいまだお店側の準備ができていなくて入れないことが頻繁にあります。そもそも一斉スタートというのが稀でもあり、日本に比べると相当おおらかだという印象です。

(本稿は書籍『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』より一部を抜粋・編集したものです)

浜田 岳文(はまだ・たけふみ)
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮のまずい食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5ヵ月を海外、3ヵ月を東京、4ヵ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破。「OAD世界のトップレストラン(OAD Top Restaurants)」のレビュアーランキングでは2018年度から6年連続第1位にランクイン。国内のみならず、世界のさまざまなジャンルのトップシェフと交流を持ち、インターネットや雑誌など国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信中。株式会社アクセス・オール・エリアの代表としては、エンターテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資も行っている。