言葉の定義をすり合わせる
3つの段取り

 ではどうすればいいのでしょうか?ざっと1~3のような段取りを踏むのが望ましいと思われます。

1:似たような言葉がいくつも存在することを会議参加者に認識してもらう
2:参加者間で最適と思われる言葉を選ぶ
3:その言葉が意味することを詳細に可視化し、メモとして残して共有する

 議論が本格化する前に、できればこの意識を共有するとスムーズです。

「ちょっと会議の流れを中断しますが、今複数の方が複数の言い方で1つのことを表現しているような気がしまして、このまま続けると会議内のコミュニケーションが煩雑になります。このタイミングで言葉の定義を統一させていただいてもよろしいでしょうか?」と持ちかけるイメージです。

 営業のシーンであればこのプロセスは営業担当のコミュニケーションの精度の高さを相手にアピールすることにもなり、営業個人の信頼度向上にもつながることを付け加えておきますね。

 さらに、これは上級テクニックかもしれませんが、言葉の定義を会議内で追求するだけで信頼や感動を得られるということがままあります。例えば、役員~マネジャーのそれぞれの役職のミッションを可視化しようという議論をしていたとします。

書影『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』(新潮新書、新潮社)『とにかく可視化 仕事と会社を変えるノウハウ』(新潮新書、新潮社)
菊池明光 著

 この手の抽象度が高い議論は、使う言葉に対して会議参加者が持つイメージがバラバラであることが少なくありません。統一されていないことがほとんどで、言いたいことを言い切れていない場合も多い。

「こういうことが言いたい」とのイメージを各人持っていたりするものの、それをしっかりと可視化しないまま会議に参加し、議論を続行してしまうことがままあります。眼前可視化しながら抽象的な言葉が出て来たら、そもそもこれはどういう意味で使うのか、すり合わせるためのファシリテーションを入れつつ定義を可視化していきます。

 そうすると「あああ、それが言いたかった!すっきりした!」という反応が返ってきます。これがファシリテーションの信頼感を生み、会議に対する感動を呼び、ひいては参加者の満足度が上がるばかりか会議の精度も飛躍的に向上することにつながるのです。