ケージで飼育されてきた繁殖犬が
人間と新たな生活に馴染むために
小型犬なら6歳で引退したとして、引き取られた後平均すると7~8年は生きることになります。多くの繁殖犬はずっとケージの中で飼育され、首輪を着けて散歩をしたこともありません。部屋でのトイレを訓練をする必要もあります。環境ががらっと変わり、新たな生活になじむ必要があるのです。
こういったことを踏まえると、人間とのコミュニケーションに慣れていないペットたちのウェルビーイングを改めて考えてみることが重要です。これは何も繁殖引退犬やシェルターから来たペットだけの話ではありません。
前回のコラムで述べたように、そもそも子犬のときから一緒に暮らしていても、ペットと人間とは別の生き物です。違う動物同士が一緒に生活しているということを理解してあげる必要があるのです。しかし、言葉を話さない犬や猫の気持ちを知るのは簡単ではありません。
「動物の言葉を理解できたらどんなにいいだろう」と多くの飼い主たちは思っているはずです。
ペット用品を販売する大王製紙が20~70代の全国のペット(犬・猫)オーナー600名を対象に今年2月に実施した「ペットとの向き合い方・共生に関する意識調査」によると、ペットの気持ちや想いについて、全体の約9割は「今よりも知りたい、分かってあげたい」と思っていることが明らかになりました。
その中でも、ペットの気持ちや想いを知るために行った方がいいと思う項目は、「表情や行動(鳴き声・ボディランゲージなど)をよく観察し、メッセージを読み取る」(63.2%)、「動物の行動や習性が示す意味を理解する」(60.0%)が続きました。動物行動学に基づいたペットの理解が必要だと、多くのオーナーが感じている様子がうかがえます。