元文春編集長が転職サイトに登録して紹介された「仰天仕事」の数々、社会での“自分の値付け”は適正か?自分の社会での「値段」が知りたくなった筆者は、多くの転職サイトに登録してみた。想像以上に意外な結果が……(写真はイメージです) Photo:PIXTA

自分の「値段」が知りたくて転職サイトに登録
紹介された仕事の数々にびっくり仰天

 大流行の「転職サイト」について、ちょっと注文をつけさせていただきます。私は2年前、通勤時間が長すぎることが辛くて女子大教授を辞めました。女子大の前は出版社「文藝春秋」で『週刊文春』や『月刊文春』などの編集長を勤めた変わり種の教授だったので、私の講義に興味を持ってくれている学生もいて、何人かが「私と一緒に次の大学について行きたい」とありがたいことを言ってくれました。

 しかし、これは大学に失礼です。実際、次に働く大学を決めずに辞めたので、今も希望する教え子たちにだけ、リモートで以前の大学と同じ内容の授業を続けています。授業だけでなく、教え子の就活の相談や面接の練習も続けているので、それなりに忙しい毎日です。

 私は本格的に再就職する気持ちはないのですが、卒業してすぐ離職する学生のために、転職面接のアドバイスやESの添削をしているうちに、自分の社会での「値段」が知りたくなってきました。そして、多くの転職サイトに登録してみました。

 現状の肩書は大阪キリスト教短期大学客員教授。AI保育を教える先端的教育の宣伝係のようなことをしています。私の転職サイトに対する印象は、最初は「凄い!」の一言でした。文春の経営者だったころ、初めて転職サイトで人を採用して、「コソコソ転職の時代」が終わり、双方がじっくりお互いのことを考えて転職できる時代がきたと思ったものでした。しかし、現在の転職サイトに登録してみると、相当質の悪いサイトもあると実感しています。

 以下は、ある日、ある転職サイトからドサッと届いた転職先の候補リストです(1社から届いたもので、私の経歴・職歴は全部登録し、希望年収は未定、毎日勤務も可能だができれば週数日にしてほしい、というのが私の希望条件です)。

(1)リサイクルビジネス事業開発部(企画立案をした経験のある人)
(2)経理担当 フレックス制度利用可能
(3)ハワイアンカフェ店長 接客を得意とする人 
(4)キャリアアドバイザー(医療・福祉に特化)
(5)リサーチャー 未経験歓迎 週に2日テレワーク可能

 この他にも、「漫画編集者タテロール経験あり」「リラックスマッサージ」「業界紙webの編集」「ITエンジニア在宅勤務8割「Jリーグクラブのグラフィックデザイナー」などなど。これらの職業を否定する気持は毛頭ありませんが、私の職歴を見て、本気でこのリストを流してきているのか疑問に思いました。

 もちろん69歳の高齢者です。どんな仕事でも生活のために欲しい人もいるでしょう。しかし、いきなりマッサージ師にはなれないし、AI保育に携わる客員教授だからといって、グラフィックデザイナーができるはずもありません。経理にいたっては簿記の簿の字も知りません。