築古マンションにおける
管理組合役員の高齢化リスク

 議論や意思決定の背景を捉えるべく、調査結果から世帯主年齢別比率を抽出した。10歳ごとの区切りを前回・前々回調査と比較したが、(1)最多のボリュームゾーンは60歳台、(2)50~70歳台が全体の7割超かつ増加傾向あり、の特徴・傾向が認められた[図表5]。

 高齢化の進行と歩調を合わせるように、マンションの世帯主も着実に齢を重ねていることが窺える。70歳台以上の比率が低下する理由に、二世帯・三世帯住宅や介護施設などへの入居を見込む。

 そんなオーナーたちから選出・運営される形態が中心の管理組合の役員構成比も、当然に高齢化が進行する形となっている。世帯主同様の年齢別の区切りで完成年度別に抽出し、総数のみ前回調査と比較した。なお、完成年度の右にあるカッコ内の数値は、50~70歳台の構成比の合計である[図表6]。

 結果は、全体でも50~70歳台の割合が7割近く(69.1%)に上昇した。最も多いのは50台であり、この年代が「若手」として、管理に向き合う実態がうかがえた。

 また、直近の調査では、完成年度が1979年以前の建物の1割近くを80歳台以上が占めた。やや古いデータながら、2013年の厚生労働省の研究報告書によれば、70歳台後半の認知症発症率は男性で8.5人に1人、女性で6.9人に一人に及ぶ。80歳台前半では男性で6.0人に1人、女性では4.1人に1人の割合だ。

 管理組合役員の年齢の上昇が判断能力の低下をもたらし、図表3・4のような結果につながっている可能性を憂慮する。つまるところ、問題を直視せずに先送りする事象だ。

 物件価格の上昇に加え、物件自体の物量も増えたことから、マンションの取得方法に占める「新築で購入」の比率は、2013・2018・2023年度の順で63.6%、62.3%、59.4%と徐々に低下した。中古物件の選定にあたっては床面積・間取り・価格・アクセスなどに目が向きがちだが、今回抽出した耐震性や管理組合役員の構成などに目を向けることも一案となろう。

(オペレーショナル・デザイン(株)取締役 デザイナー/データアナリスト〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)