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修繕積立金の
2つの方式

 マンションの建物維持に必要な修繕積立金は「将来値上げを行う」増額方式で積み立てているところが「必要な額を着実に積み立てていく」均等割方式のところを上回る。その一方で、予定どおり増額できたマンションは6割に満たない。この背景に管理費や修繕積立金の延滞率の上昇があり、同時期に完成されたマンションでも空室の多いところと少ないところの差が広がっている――国土交通省の調査結果から、そうした実情が突き付けられた。こうした中では、近い将来、管理不十分のマンションが増加する事態を憂慮せざるを得ない。

 前回(https://diamond.jp/articles/-/347048)に引き続き、6月21日に公表された「令和5年度マンション総合調査」の結果(以下「調査結果」とする)のうち、注目に値する数値をごく簡単に紹介・解説させていただきたい。

 前回、旧耐震基準で建設されたマンションながら耐震診断を行っていない最大の理由が「予算(すなわち耐震のための工事費)がない」であること、単純計算で、そうしたマンションが全体の4.5%、つまり22.1棟に1棟の割合に達する事実を紹介した。今回は、その数値を踏まえ、調査結果から修繕積立金の状況を捉えてみたい。

 平均的なマンションの建物維持では、各区分所有者に管理費と修繕積立金の支払いを毎月求め、管理組合名義の銀行口座などにプールして修繕工事などに支払う手法が採用されている。このうち修繕積立金については、大規模修繕工事を一定の頻度で実施する予定を立て、大まかな見積りに合わせてあらかじめ積み立てていく方式が主流だ。

 その積立方式についても、大規模修繕工事に必要な額を毎月着実に積み立てていく均等割方式のマンションと、段階的に金額を引き上げる方式を採用しているマンションがある。このため、建物の完成年度別の切り口で積立方式の採用状況を参照した[図表1]。

 一覧すればすぐに判別できるとおり、築浅の物件ほど段階増額方式の比率が高まり、2020年以降では9割近くに達する。こうした実情の下で、全体としても増額積立方式が47.1%と均等積立方式の40.5%を上回る。